点前の見せ処

仕舞を稽古していて分かった事は、仕舞は型の連続であるということ。だから、一つの型を完了しない限り、次の型にはいけないのである。単純な事ではあるが、これは大事な原則である。翻ってお茶の点前。これも、型の連続としてとらえることができる。であれば、一つの型を完了しない限り、次の型を始めてはならないはずだ。

しかし、これがなかなか難しいのである。弟子の稽古を見ているとよく分かる。気がせくとなおさらである。宗徧流の点前の特徴として「あしらう」という所作がある。例えば、茶を掬った茶杓を茶器の蓋に戻す際、一度指を茶杓の切りどめまで滑らせる。このあしらうという所作は一つには点前が丁寧に見えるという点がある。それだけでなく、型を完結させるという意識につながる効果があると思うのである。

仕舞には「序・破・急」というリズムがある。ゆっくり始めてテンポ良く終わるということ。型の一つ一つを分解すると、一定のリズムではないのである。このリズムが動作に緊張感を与えている。お茶の点前も同じなのかもしれない。

弟子を指導していて感じる事は、リズムが悪いということ。全体を通して「ゆっくり」。これは「丁寧」という事なのかもしれないが、時に野暮に見えることがある。例えば、濃茶は茶事のメインであり、懐石や道具組などは全て一服の濃茶を美味しく頂くためのものである。だから点前は重厚であって良い。しかし、薄茶は違う。そもそも、濃茶には足らない茶葉を挽いて軽く点てるのが薄茶であるし、濃茶をいうメインが済んだ後の気楽な茶が薄茶である。であるから点前は軽やかにが良い。しかし、全てが軽くては雑に見える。だからこその、「あしらい」であり「間」なのだと思っている。

茶道界

コロナ禍を経て、茶道界も少々様変わりしたように思います。各地で大寄せの茶会が復活し、大勢のお茶人で賑わう光景を頻繁に眼にするようになりました。しかし、実態はすこし変化しているようです。

コロナ禍前は普通に思っていた、例えば三畳に十名が詰め込まれるような茶会。当時は違和感を感じつつもあたりまえと思っていましたが、コロナ禍での「ソーシャルディスタンス」を確保した上での茶席を経験すると、かつての大寄せ茶会に対する疑問が顕在化するようです。

しかし、現実的に考えるとその疑問に対する答えはなかなか難しいと思わざるをえません。現状、茶道界で行われている茶会は、数百人が一堂に会する「大寄せ」と少人数で結構な懐石が振る舞われる「茶事」のいずれかです。大寄せは気楽に参加できる反面、本来の茶の湯の楽しみからは乖離してしまうと言わざるを得ません。一方の「茶事」は茶の湯の楽しみは存分に味わえるものの、費用がかかり、また特別な会という印象拭えません。

どうにか、日常的に無理のない範囲で、茶の湯を楽しめないかと模索するなか、参考になったのは室町から江戸時代における「侘び仕立て」の茶事です。あの利休でさえ、生涯に(記録が残っている限りで)一汁三菜を超える懐石を出した茶会(茶事)は数回しかありません。紹鴎は、「珍客たりとも、会席(懐石)は一汁三菜を超えるべからず」と言っています。これに倣い、獨楽庵では一汁三菜の懐石による茶事をメインに据えています。大寄せでもなく、「茶事」でもなく。亭主としては、365日、一日3回できないと思うことはしない方針でいます。

どうか、会員の皆様は亭主の負担を気になさらずに、どんどん「獨楽庵茶会」にお申し込みください。そもそも、負担と思うことは案内しておりませんので。

巨福山建長興国禅寺 四ツ頭茶会

去る10月24日、鎌倉・建長寺の四ツ頭茶会で少林窟席を勤めました。四ツ頭茶会とは、禅林における古くからの茶の儀礼で、建長寺では開山の大覚禅師様のご命日(開山忌)に開催されます。山内では、本席である四ツ頭茶会の他、中国茶席、程茶席、薄茶席2席が開かれ、私は宗徧流関東地区を代表して、少林窟席の席主を勤めました。

建長寺は1253年、大覚國師が鎌倉5代執権・北条時頼を開基として開山。我が国最初の禅専門道場でもある日本を代表する臨済宗の古刹です。我が国初の禅専門道場である建長寺の、それも修行の中心である僧堂でのお席ですから茶人として大変名誉なことです。我が家の菩提寺は派こそ違え同じ臨済宗ですので、子供の頃から親しんだ禅宗の空気感・色彩感をもって席を作りました。

吉田正道管長猊下をはじめ多く和尚様にも席に入って頂き、臨済宗の信徒としまして感無量でした。。また、禅と茶の湯の関わりを肌で感じることができた一日でした。決められた時間内に500名のお客様をおもてなしするため、席によってはお客様に窮屈な思いをさせてしまったこともありました。また、ゆっくりお話したいところを、追い立てるように退席をお願いすることもあり、不快なおもいをさせてしまったことを痛感しております。

当日は、多くの獨楽庵友の会の皆さまにお出まし頂き声援を頂きました。お陰様で、全13席を無事に勤めることができました。心より御礼申し上げます。当日慌ただしくお話できなかっとこと、次回ご来庵の時にゆっくりお話させて頂こうと思っています。