首都高速を愛車(シトロエンC5ツアラー)で走っていたところ、その後継車であるシトロエンC5エアークロスとしばし並走することになった。こちらは時代遅れのステーションワゴン(フランス流に言えば“ブレイク“)。かたや今流行りのSUV。
愛車C5を一言で表せば、「最後のハイドロ・シトロエン」。車に興味のない方は「なんのこっちゃ?」だろう。簡単に言えば、普通の車のバネとダンパーの作用を、特殊なオイルとガスで代用したもので、一般には「魔法の絨毯」と称される浮遊感のあるソフトな乗り心地で有名。そのシトロエンの代名詞とも言えるハイドロニューマチックを搭載した最後のモデルが我がC5なのである。つまり、後継者たるC5エアークロスにはハイドロは搭載されていない。しかし、その乗り心地を再現するために、「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)という新技術を採用している。乗ったことはないが、おそらく同じような乗り心地を再現しているのだろう。
私はこのPHCという新技術を支持しない。なぜなら、それは1955年にハイドロニューマチックを世に問うたシトロエンの魂の曲解であるから。シトロエンは、「魔法の絨毯」を実現したくてハイドロを導入したのではない(と思う)。フランス人の根は「ケチ」(フランス人の皆さん気を悪くされたらごめんなさい)。ケチなフランス人が「空飛ぶ絨毯」を実現するために余計なコストをかけるはずがないし、それを受け入れるはずもない。ハイドロは、ステアリングを含め、パワーアシストを必要とする全てを一系統の油圧システム、すなわちハイドロニューマチックにまとめてしまおうというのが、そもそもの出発点であったはずだ。つまり、別々の油圧系統を持つよりも「安上がり」。これがハイドロの出発点。その後、種々のトラブルに見舞われ、ハイドロはサスペンションだけに残された。このあたりから、ハイドロ=サスペンション=「空飛ぶ絨毯」=シトロエン という図式に矮小化されていく。「空飛ぶ絨毯」こそ、シトロエンのアイデンティティになっていく。そのアイデンティティが、ハイドロを用いずに実現できるのであれば、信頼性を含めその方が好ましい(はず)。その帰結が、C5エアークロスに採用されているPHCである。
確かに「空飛ぶ絨毯」は実現できたのかもしれない。しかし、それがシトロエンというメーカーのアイデンティティだと考えるのは、下らぬ勘違いに過ぎない(と思う)。シトロエンのアイデンティティは「ケチ」なのである。言い方が悪ければ「合理性」なのだと思う。それを現代に再現しない限り、シトロエンのアイデンティティは薄まるばかり。やがて、泡沫に帰することだろう。
そこで思い出したのが、「ミニテル」。1982年に本格運用が始まったいわゆる「ビデオテックス」である。世界で唯一成功した「ビデオテックス」と言ってもいいだろう。
その「ミニテル」と「ハイドロ」の共通点は・・・話が長くなるので次回に。画像が、その「ミニテル(Minitel)」端末。