コロナ禍を経て、茶道界も少々様変わりしたように思います。各地で大寄せの茶会が復活し、大勢のお茶人で賑わう光景を頻繁に眼にするようになりました。しかし、実態はすこし変化しているようです。
コロナ禍前は普通に思っていた、例えば三畳に十名が詰め込まれるような茶会。当時は違和感を感じつつもあたりまえと思っていましたが、コロナ禍での「ソーシャルディスタンス」を確保した上での茶席を経験すると、かつての大寄せ茶会に対する疑問が顕在化するようです。
しかし、現実的に考えるとその疑問に対する答えはなかなか難しいと思わざるをえません。現状、茶道界で行われている茶会は、数百人が一堂に会する「大寄せ」と少人数で結構な懐石が振る舞われる「茶事」のいずれかです。大寄せは気楽に参加できる反面、本来の茶の湯の楽しみからは乖離してしまうと言わざるを得ません。一方の「茶事」は茶の湯の楽しみは存分に味わえるものの、費用がかかり、また特別な会という印象拭えません。
どうにか、日常的に無理のない範囲で、茶の湯を楽しめないかと模索するなか、参考になったのは室町から江戸時代における「侘び仕立て」の茶事です。あの利休でさえ、生涯に(記録が残っている限りで)一汁三菜を超える懐石を出した茶会(茶事)は数回しかありません。紹鴎は、「珍客たりとも、会席(懐石)は一汁三菜を超えるべからず」と言っています。これに倣い、獨楽庵では一汁三菜の懐石による茶事をメインに据えています。大寄せでもなく、「茶事」でもなく。亭主としては、365日、一日3回できないと思うことはしない方針でいます。
どうか、会員の皆様は亭主の負担を気になさらずに、どんどん「獨楽庵茶会」にお申し込みください。そもそも、負担と思うことは案内しておりませんので。