まことに不覚ながら、「歌澤節」という江戸末期に誕生した三味線歌曲を見逃していました。改めて、ネットを検索してみると、「歌澤節」とは実に妙味深い歌曲であることがわかりました。
大方の説ですと、歌澤節は端唄から派生したものとのことです。端唄はいわゆる流行歌ですのでサラッと歌いますが、歌澤はまったりと歌うことで、渋みと深みを持たせています。三味線の手も少なく、歌をじっくりと聞かせる方向に進化したようです。歌の内容も男女の仲を題材にしたものが多く、花柳界で人気が高かったということです。
YouYubeに歌澤節がいくつかアップされていたので早速聴いてみました。第一印象は、「(江戸)小唄に似ている」というもの。実際、歌澤節の演者が江戸小唄の興隆に大きな役割を果たしていたようです。小唄の父は端唄ということになっていますが、歌澤節と江戸小唄はその血を分けた兄弟のように思えます。
違いは、江戸小唄は歌澤と比べるとテンポがよく、三味線の技巧を聴かせる要素が多いように思います。言い換えると、歌澤節は全編ゆったりと、まったりと歌うので、ある意味「退屈」です。そのため、後発の小唄は途中で早間を入れたり、セリフを入れたり、三味線を聴かせたりと変化に富んでいるということかもしれません。この辺りは、専門家の意見を拝聴したいとことです。
いずれにしても、「歌澤節」。なかなか興味深いジャンルです。

