雨混じりの日が増えてきました。そろそろ梅雨入りでしょうか。
この時期になると思い出す小唄に『空や久しく』があります。明治中頃、一中節の太夫・都以中の作曲と伝えられています。
歌詞 「空や久しく雲らるる 降らるる雨も晴れやまぬ 濡れて色増す青柳の 糸のもつれが気にかかる」
節は、一中節の名手らしく、一中節、清元などの節を巧みに引用し高い評価を受けていますが、小唄作詞家・評論家の小野金次郎氏によれば、歌詞は“駄文“だそうです。私にはそうは思えないのですが・・・
前半の二節は、雨続きで晴れ間が見えない、梅雨の鬱陶しさが伝わってきます。「青柳」とは、「花柳界」を連想させますし、「青」は若さを思わせます。「色増す」というのが柳がいい色になるという意味ですが、深読みすれば「色気が増す」ということかもしれません。さらに「濡れて」ときます。「濡れて」というのは男と女のアレとしましょう。この節を意訳すれば、「あの若い芸者も、男ができたのだろうか、色気が増してきた」とでもなりましょうか。締めは「糸のもつれが気にかかる」です。「糸のもつれ」とは男女関係もつれかもしれません。
この歌詞を男の視線から見るか、女の視線から見るかで解釈が違ってくるでしょうが、女の視線で見たとすると、こんな感じに解釈できないでしょうか。女はベテランとは言わないが一本立ちした芸者。空が鬱陶しいだけでなく、心も塞ぎがちの今日この頃。というのも、あの小娘だと思っていた娘がどんどん色気を増している。男がいるに違いない。もしや、私の・・・ という三角関係。だから、糸がもつれるのでしょう。
少々色気が過ぎるでしょうか。
写真は“濡れて色増す“八王子中町の柳と黒塀