小唄「水指の」

小唄の中には、お茶に関係する曲もあります。以前紹介した、江戸小唄第一号「散るは浮き」は大名茶人として有名な松平不昧公の作詞です。不昧公は、小唄のために作詞したのではなく、単純に歌を読まれたのですが。

「水指の」という曲は、そのものずばり茶室の風景を唄ったものです。


“水指の二言三言言いつのり 茶杓にあらぬ癇癪の わけ白玉の投げ入れも 思わせぶりな春雨に 茶巾しぼりの濡れ衣の 口舌(くぜつ)もいつか炭点前 主をかこいの四畳半 嬉しい首尾じゃないかいな“

掛け言葉や韻を踏む箇所がいくつか出てきます。「水指」とは「仲に水を指す」つまり、「言い争い=口舌」の場面であることを暗に示しています。「茶杓にあらぬ癇癪の」は「シャク」という韻を踏んでいます。「茶杓」に特に意味はないでしょうね。「わけ白玉の」は「訳は知らない」という掛け言葉。「投げ入れ」は、「茶の花は投げ入れ」と言われるので付け足したのでしょう。「口舌もいつか炭点前」の「炭」は「済み」ですね。「口舌(くぜつ)」というのはちょっとした言い争いのことです。ですから、いつの間にか、言い争いも(気が)すんでしまったということでしょう。最後は、艶っぽい歌詞が続きます。

女性は、まさかお茶の先生ではないでしょうが。お茶の言葉を巧みに並べて男女の仲を描いた粋な曲だと思います。

クラフトビール

元来のビール好きですが、ここ数年は糖質の摂取を控えるため敬遠気味です。飲みに出ても、ビールは最初の一杯に止めるようにしています。そこで、最近の傾向ですが、量より質に転化。要は、ビールがぶ飲みから、質の高いビールを楽しむという方向です。

質の高いビールというと、サッポロ→エビス と思われるかもしれませんが、それより異次元のビールがあります。「クラフトビール」と呼ばれている、小規模醸造家が造るこだわりのビールです。数年前までは、国内産のクラフトビールは稀て、輸入ビールが主流でしたが、近年では国内でも超個性的なビールを造る醸造家(ブルワー)が増えてきました。地元八王子でも、クラフトビールを提供する店が徐々に増えています。今では、知る限り五軒の店があり、ブルワーも2社活躍しています。

rビールには無限とも思われるスタイルがありますが、大きくラガー(下面発酵)とエール(上面発酵)に分けられます。日本の大手のビールはもれなくラガースタイルです。ラガーは澄んだ味わいとキレ特徴ですが、製造はとても難しいと聞いています。とあるクラフトビール界のリーダーは、「帝国ホテルのコンソメスープ」に例えました。これに対して、エールは比較的造り安く、小規模醸造家に向いていると言われています。その中でも主流はペールエール。イギリスのパブでビールといえば、ほぼペールエールというくらい愛されているスタイルです。帝国時代、ビール好きのイギリス人はインドまでペールエールを運びたかったのですが、赤道を超えて品質を保つことができませんでした。そこで考え出されたのが、ホップを大量に投入するということ。そうして生まれたのが、インディア・ペールエール。インド向けのペール・エールということでしょうか。ホップを効かせたことによる、華やかな香、味わい、苦味が特徴です。

そのインディア・ペールエールは、IPAと略されることも多く、今ではクラフトビールのスタンダードとして多くのビール通に愛されています。そこにさらにホップを追加投入したのが、ヘイジーIPA。ヘイジーとは濁ったという意味です。ものによっては「トロピカル」と表現されるくらい華やかな香と味わいが特徴です。これからの寒い時期、私的にはヘイジーIPAがファースト・チョイスです。

写真は、クラフトビール好きの聖地、Antenna America が東京駅八重洲地下街に開いた2号店。

小唄をひとことで言うと

「小唄」と聞くと皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。「月は朧に東山 霞む夜毎の篝火に・・・」と『祇園小唄』でしょうか、「富士の高嶺に降る雪も、京都先斗町に降る雪も・・・」の『お座敷小唄』でしょうか。はては、「さらばラバウルよまた来る日までは・・・」の『ラバウル小唄』でしょうか。

一般名詞としての「小唄」とは、文字通り「小さい」唄。つまり、短い・軽い歌という意味でしょう。ですが、このブログで再三書いている「小唄」とは違います。より正確には、「江戸小唄」というべきでしょうか。幕末に江戸で成立した三味線歌謡の一種で、江戸っ子に愛されたことからもわかるように、粋で洒脱な“小“唄です。

一般には、端唄から派生したと言われています。確かに、端唄と小唄には共通の楽曲があります。しかし、違いも多くあります。まず、同じ三味線で唄うといっても、端唄の三味線は撥を使って弾きますが、小唄は爪弾きです。三味線の節も、端唄はどちらかというと伴奏に近いのに対して、小唄は唄をあしらいつつも、唄を縫うように独特の節を奏でます。また、端唄がいわばストリートミュージックとして、流行歌が口傳で伝播したので誰が作ったか不明であるのに対して、小唄は作詞者、作曲者が特定されています。ですから、小唄が端唄から派生した説には首を傾げざるを得ません。

そこで、本題です。「小唄をひとことで言うと?」 実に難しい問題です。俗曲の柳家小菊師匠のCD『江戸のラヴソング』を拝借して、「江戸のラブソング」はどうかと思いましたが、ラブソングだけじゃないし、江戸時代に限定もしてないし・・・ なかなか答えは見つかりません。