灰の手入れ

この時期になると、灰の手入れをします。炉に入れていた灰、風炉で使った灰。全ての灰を篩にかけ、大きなタライに入れます。タライに水を注ぎ、灰を攪拌させると時にブクブクとアクが浮かび上がってきます。この上澄みを捨て、真水を注ぎ灰を攪拌。この作業を4、5回繰り返すと、上澄が透明になってきます。

そうしたら、ドロドロになってタライの底に沈んでいる灰を取り出し、簀に敷いた新聞紙の上に薄く伸ばしていきます。これを一昼夜ひだまりにおいて乾かします。カラカラに乾かすのが秘訣。このカラカラに乾いた灰を再びタライに入れ、ほうじ茶を加えながら砕き揉んでいきます。

こうして湿り気のある綺麗な灰が出来上がります。この灰は甕に入れて保管し、ことあるごとに使用します。ほうじ茶で揉んだ灰、しばらくは湿っていますが、年を越すあたりで乾いてしまいます。湿し灰が本格的に必要になるのは風炉になってから。なにしろ、灰が湿っていないと風炉の中に灰山が作れないのです。つまり、湿した灰が必要な時には夏の炎天下で一所懸命湿した灰はすでに乾き切っているので、再度その灰にほうじ茶を注ぎ揉んで湿し灰を作ることになります。

ではなぜ、夏の暑い盛りに灰をカラカラに乾かした上で、ほうじ茶を注いで揉みに揉んで湿し灰を作るのでしょうか。それは、湿した灰が主眼なのではなく、一年間使った灰を篩い、洗い、揉んで灰を仕立てていくの工程なのです。こうした手入れをうけた灰は一眼でわかります。だから、茶人は炭点前の時に炉中を拝見し、まずもって手入れの行き届いた灰を褒めるのです。その時に、炉中の灰が何年もほったらかしにされていた灰であったら、客はどう感じるでしょうか。

灰の手入れにお金は掛かりません。せいぜい、ほうじ茶くらいです。しかし、想像を絶する時間が必要です。お金では解決できないことに拘る。これが侘び茶なのではないでしょうか。

ショートムービー

アメリカのシリコンバレーに済む友人の奥さん(二人とも元従業員)から、「亭主の50歳の誕生日祝いのサプライズにしたいから、世界中の友人に20秒のショートムービーを頼んでいる」とのメールがあったので、締め切りギリギリではあるが、自撮りにチャレンジしてみた。

iPhoneを三脚に固定してムービーを撮影して、それを20秒にカットすればいいだろ・・・と簡単に考えていたものの、想像に反して還暦過ぎの身には至難の技。最初に撮影したムービーを観たところ、違和感が。左右が反転してしまっているではないか。この修正方法を見つけ出すのにまず時間を要してしまう。ムービーの内容は、立礼机で点前をして、お茶が点ったところで”Happy Birthday!”に決めていたが、構図がなかなか決まらない。手元を写せば、顔が写らず・・・などなど。結局、撮影に2時間を要し、その後の編集も1時間以上。

やっと完成したムービーであるが、iPhoneで撮影したムービーは”,MOV”というフォーマットで、一般的なMP4ではない。その変換方法を見つけるのに時間を要したが、結論は単に”.MOV”を”.MP4″に書き換えればいいということ。灯台下暗し・・・はいいのだが、なぜAppleはわざわざMP4″ではなく、”MOV”などという拡張子をつけたのだろう。不思議だ。

それはともかく、日本とアメリカ西海岸の時差を考慮にいれれば締め切りに滑り込みセーフ。なんとか約束は果たせたようである。

20秒と言われていたのに、完成品の尺は22秒になってしまったが(笑)

靖国神社

今日は、獨楽庵を休みにして靖国神社を訪ねました。9月6日(土)には、茶道宗徧流の家元献茶式が行われますので、その最終確認を兼ねてご挨拶です。

終戦の日を二日後に控え、早くも普段の数倍の参拝者が訪れていました。境内のあちこちには、参拝客の対応にあたるスタッフ用でしょうか、テントが張られていました。なかには、献茶奉賛会なる名入りのテントも。どちらかの宗匠が献茶をなさるのでしょうか。

約束の時間よりも早く到着できたので、お参りを済ませてカフェで昼ごはん。靖国神社にお参りしたらやはりこれに限ります。海軍カレー。

明治41年(1908)刊の海軍の調理教本『海軍割烹術参考書』の「カレイライス」レシピに基づいて再現された海軍食とのことです。

境内には能舞台もあります。春には、「夜桜能」が開催されことで知られています。桜の時期の靖国神社で舞う能は格別でしょう。これまで観能はかないませんでしたが、来年こそ。