牡丹雪

雪が降ると、どういう訳か小唄を思い出します。

小唄松峰派の代表曲の一つ『牡丹雪』。時代はグッと下がって平成11年の作品。作詞は茂木幸子師。曲は、初代家元松峰照。

夜更けていつか牡丹雪 帰さないよと降りつもる 差しつさされつ盃を 片手に聞いてる明がらす 「あの時さんは何処にどうしていさんすことじゃやら ま一度顔が見たい逢いたいわなあ」 昨日の花は今日の夢 廓の恋の悲しみを今に伝えてなおいとし 「はい お酌」

小唄「初雪」のように、いい仲の二人の逢瀬。雪が段々と大粒になり、それをいいことに段々と深まる二人の逢瀬。廓言葉のセリフから、古の吉原の世界に引きずり込まれるものの、最後の「はい お酌」で今に引き戻される。この「はい お酌」がいいんだんなあ。これは、ベトベトした口調ではなく、あっさりと。酒の機嫌で古の廓に思いを馳せている男を、一瞬で現実に引き戻すくらいのあっさり感が丁度良いと思う。

 

梅は咲いたか🎵

いつの間にか庭の梅が咲いていました。今日から2月。春はもうすぐそこまで来ています。

「梅は咲いたか桜はまだかいな 柳たなよなよ風まかせ 山吹や浮気で色ばっかりしょんがいな」

今年は、「初雪」を唄わないまま、「梅」になってしまいました。そうこうしているうちに、「夜桜」になって・・・ まだ、始まって一月ですが、一年は早いですね。

三越劇場

日本橋三越本店内にある「三越劇場」は、古典芸能の聖地と言っても差し支えないでしょう。特に、「小唄」では。

その三越劇場で、令和6年4月14日(日) 小唄松峰派樹立55周年記念演奏会が催されます。小唄は江戸の末に、二代目清元延寿太夫の娘お葉が、二代目延寿太夫贔屓にしていた松平不昧公の歌に節をつけたものが始まりと言われている、三味線邦楽の小曲です。

不昧公の歌は「散るは浮き 散らぬは沈むもみじ葉の 影は高尾か山川の水」。この最後の句を「水の流れに月の影」としたのが秀逸であることは言うまでもありませんが、曲が優れていなければ小唄というジャンルは後世に続かなかったでしょう。何事も先駆けとというのはそういうものなのかもしれません。

翻って、我が松峰派。昭和45年の小唄酣春会にて竹枝せん照が小田将人の詩に曲をつけ「雪灯り」として披露したのが始まり。その翌年、せん照は松峰照を名乗り「松峰派」を樹立します。その様子については、小唄の先哲 八海老人のブログがふるっているので、ご参照ください。

4月14日の記念演奏会は、全番組松峰派のオリジナル曲。私は第一部で「雨の宿」「一人暮らし」を、番外で「未練酒」「好きなのよ」を唄います。番外は、八王子芸者の小唄振りつき。お近くにお越しの節には是非お立ち寄りくださいませ。