茶道の傍、稽古を続けております「能」。今年は、「猩々」のシテを勤めることになり、一年中「猩々」が頭から離れませんでした。その中で、能と茶道の共通点も見出すことができ、とても有意義な一年だったと言えましょう。
共通点については、何度か書いてきましたので傍に置いておく事として、その共通点を認識した上での相違というと、まずは「芸能」という視点です。能は明らかに芸能です。舞台で舞うことに対して何らかの対価が支払われます。それに対して、茶道の点前は「芸能」ではありません。いわゆるパフォーマンスではないのです。
では、わざわざ客の面前で披露する「点前」とは何なのでしょうか。かくいう私も若い頃は「パフォーマンス」たと思っていました。お客様に美しい点前を見せようと。でも、今はパフォーマンスではないな・・・と思っています。
その違いは何なのでしょうか。一つは、こう考えます。パフォーマンス、芸能は、基本的にプラス思考です。どういうことかと言うと、どうしようもない出来でも、舞台に上がる以上それが最低線となります。つまり、その出来栄えは批判されないのです。批判されない代わりに、満足できないパフォーマンスには対価は支払われない。でも、「金返せ」ということにはなりません。
一方、茶道の点前はマイナス思考です。よくできてあたりまえ。不快感を与えたら「金返せ」にはならないまでも批判の対象となり得ます。この点が能と茶道の点前の決定的な違いだと思います。能は芸能ですから客を満足させてなんぼ。茶道の点前は、不快感を与えなくてなんぼ。それでも、客の面前で披露するからには多少なりとも「芸能」の破片があるはずです。それは何なのでしょう。
私は、その人の生き様だと思っています。
