初雪

昨日、東京も初雪が降りました。例年より10日遅い初雪だったそうです。ここ数日、日中は冷え込みを感じますが、それでも暖かいのですね。

有名な小唄に「初雪」があります。小唄を習ったことがある人でしたら、よくご存知だと思います。

「初雪に降りこめられて向島 二人が中に置炬燵 酒の機嫌の爪弾きは 好いた同士の差し向かい 嘘が浮世か浮世が実か 誠くらべの胸の胸」
初代清元菊寿太夫詩・曲

いい仲の二人、向島でお忍びで逢っている最中に雪が降り出し、これ幸に?長居しようか・・・という雰囲気です。女の三味線は爪弾き。ということは、唄っているのは小唄です。差し向かいで酒をさしつさされつ、相手の心を探る。小唄の三味線は伴奏ではありません。つかず離れずがいいとされています。だから、お互いの心を探りつつ駆け引きがあるのです。

クラフトビール

鎌倉浄明寺の茶道宗徧流宗家を訪ねる楽しみの一つは、鎌倉駅東口に3軒あるクラフトビールの店。

一軒は、元々アメリカ人が経営していたタップルームを日本人スタッフが引き継いだ(らしい)お店。フードも秀逸だが、ここではビールに集中。二軒目は、小町通りの入り口にあるビルの4階にできたタップルーム。タップの多さが魅力。

三軒目は、二軒目のタップルームが入っているビルの向のビル3階にあるトルコ料理店。この店行くお目当ては、フムスというひよこ豆のペースト。トルコに限らず、中東では最も一般的な食べ物だと思う。イスラエルでは、これをピタにディップ。トルコにはピタはないので、トルコ風パンをオーダーして、これにディップ。もう一つは、ファラフェルという、これもひよこ豆を使った料理。いわば、ひよこ豆のコロッケ。この2皿はクラフトビールに悪魔のように合うので危険。

先日も宗家の帰りに、フムスとファラフェルを肴にクラフトビールを2パイント。

茶道宗徧流義士茶会

茶道宗徧流の流祖・山田宗徧は元禄14年の赤穂事件(いわゆる赤穂浪士討ち入り)に深く関わっていました。そして、吉良家、浅野家双方に茶友、弟子がおりました。その人々が斬り合う事件に遭遇した山田宗徧の心を偲び、また両家で命を落とした人々を霊をともらうため、宗徧流ではこの時期に全国で「義士茶会」を開催しています。

最も大きな「義士茶会」が宗徧流門人会が開催するもので、今年は「どうする家康」にちなんだ訳ではありませんが、静岡市の名亭「浮月楼」に400余名を集めて開催されました。茶道宗徧流十一世家元、幽々斎宗匠が勤められた濃茶席。スターは、先代四方斎宗匠が、父君、八世家元・宗有宗匠をイメージして考案された「天球棚」とそれに寄り添う「天球風炉釜」。トルコを愛し、日土友好に貢献された宗有宗匠。天球棚はモスクをイメージさせます。

写真は、先に終了した青山ワタリウム美術館「山田寅次郎展」に展示された「天球棚」。展示会期間中には、この棚に寄り添う「天球風炉釜」の行方は不明でしたが、その後新潟の門人が所持していることが分かり、静岡で出会うことになりました。

席中では、幽々斎宗匠が赤穂事件に関わる山田宗徧と、それが故の宗徧の苦難をお話されました。赤穂事件の当日は、吉良邸で茶会が開かれていました。正客は、山田宗徧からすれば主君の小笠原長重公。これだけでも、宗徧にとっては大事件です。この時期、どうしても「忠臣蔵」が話題に上り、赤穂浪士=忠義、吉良義央公=悪 という図式になりがちですが、双方に思いを馳せ、霊をともらうことが山田宗徧の意思であり、現代の宗徧流門人だと思うのです。

斑唐津

去る12月5日、新宿・柿伝ギャラリーで開催されていた『藤ノ木土平展』を訪ねました。

酒器、懐石の器に紛れ数点の茶碗。斑唐津の茶碗が真っ先に目に止まり、即購入を決めてしまいました。白味の強い色合いも気に入ったし、何しろ土見せにケレン味が無い。「茶碗には茶を飲ませ、酒器には酒を飲ませよ」とは唐津在住の大先輩の言葉。

これから先、どのように変化するか。楽しみな器です。

チキンカツ

大学4年間を過ごした東京小平市。駅前のとんかつ店「藤の木」は部活帰りの定番。まず生ビール大で喉を潤し、決まってチキンカツ。この店では、とんかつではなくチキンカツ。とんかつが不味いということはなく、普通に美味いのであるが、チキンカツが別格。ボリュームがありコスパが高いのも学生向き。

チキンカツというとムネ肉でパサパサした印象があるが、ここはおそらくモモ肉。皮と皮の下の脂肪が絶妙に香ばしく仕上がっていて、ジューシーかつサクサク感あり。個人的には日本一、いや宇宙一のチキンカツ。

学生の頃から通い続けている、理容店に散髪に行ったついでにランチ&ビール。味は大満足だが、ボリュームが還暦過ぎの胃袋には厳しい。好物を腹一杯食べられない。年はとりたくないものである。

山田宗徧 「今日の歌」

山田宗編作の歌に「今日」がある。「さしあたることのはばかり思へただ きのふはすぎつあすは知らねば」

私ごとであるが、10月14日に東京渋谷・セルリアン能楽堂にて開催された素人会で能『橋弁慶』のシテを勤め、その翌週には土日二日間に渡る流儀の茶会を仕切り、その三日後には家元献茶式のため伊勢神宮へ。帰京して、4日後には小唄で準師範を頂く。その間、茶室を風炉から炉に切り替え、「開炉の茶会」を開催。その合間に、地元町会の街道祭りで綿菓子作り、等々。そんな目まぐるしい毎日。「さしあたること」に集中することでなんとか乗り切ることに。何度、この歌のありがたさを痛感したことか。

しかしながら、山田宗徧は決して「行き当たりばったりの人」ではない。周到に準備を重ね、万端以上の準備を持って事にあたる人である(と、思う)。その山田宗徧を持ってして「さしあたることのはばかり思へただ」である。物事に流されて、とりあえず目前の要件をこなしていく・・・ということではない。準備に準備を重ねて、それでも「明日は知らねば」の心境なのである。

茶道家あるある

茶道を習い始めたばかりの頃、ようやく風炉の点前に慣れたと思ったら、無常にも季節は炉になり一から出直し。この繰り返しを数年繰り返してようやく点前を俯瞰できるようになる。茶道家の誰しもが通った道だと思います。

四半世紀も稽古を続けて、今更初心者を名乗る訳にもいかないのですが、やはり切り替わった直後は戸惑いがあります。そのような時に心強いのが山田宗徧翁が300年以上前に刊行した『茶道便蒙抄』。最古の茶道テキストと言われています。

そこに収録されている「置合せ図」。我々が戸惑うのはまさに「置合わせの位置」。茶道宗徧流の祖は300年以上も前にそこに気付き先回りしてくれていました。お陰で我々宗徧流門人は流祖山田宗徧の点前に倣う事ができ、それを通して流祖の心を探る事ができるのです。

テーマ画像は『茶道便蒙抄』に収録されている三畳半座敷の置き合せ図。改めて確認しました処、燭台の扱いを間違っていました。反省。

小唄松峰派『松韻会』

小唄の話題が続いて恐縮です。去る11月17日、新宿で小唄松峰派の『松韻会』が開催されました。『松韻会』、社中の男性の発表会・勉強会です。

私は、第一部で『未練酒』と『好きなのよ』を。第二部で『雨の宿』と『一人暮らし』を唄いました。どれも、来年4月の松峰派樹立55周年演奏会で唄います。『未練酒』と『好きなのよ』は、八王子の芸妓衆が振り(小唄振り)をつけて色を添えてくれることになっています。この小唄振り、広く知られている古典(古曲)のいくつかには振りがついていて、各花柳界で大事に受け継がれています。松峰派は新曲なので小唄振りがついている曲はまずありません。今回も、踊りのお師匠さんにお願いして振りをつけてもらっています。どんな振りになるのか今から楽しみです。

松峰派の唄には、セリフや三味線と離れて「アカペラ」で唄う部分がある曲は数多くあります。『未練酒』はその代表作で、「おまえお立ちか お名残惜しい」。短い文句ですが、たっぷりと情感豊かにアカペラで。聞かせ処です。

小唄〜『雨の宿』

「灰皿の煙草に残る紅のあと つい言いすぎた痴話喧嘩 もうこれっきりと言い捨てて 帰っ女の残り香が 未練心をかき立てて 音もなく降る雨の宿」

小唄松峰派代表曲のひとつです。小唄という邦楽ジャンルは江戸末期に誕生し多くの作品は明治、大正期に作られました。そんな中で、松峰派は初代松峰照師が昭和40年代に樹立。来年はその樹立55周年を祝う演奏会が三越劇場で開催されます。

私も、松峰照正として舞台に上がりますが、今回は『雨の宿』『ひとり暮らし』を唄います。番外の小唄振りでは『未練酒』『好きなのよ』をと、合計4曲を唄うことになり稽古に励んでいます。小唄振りとは、小唄に合わせて芸妓が振りをつけることを言います。お座敷で成長してきた小唄らしい出し物と言えると思います。

冒頭に書いたのは『雨の宿』の歌詞です。昭和も40年代になると女性の社会進出が進み同時に男女の間柄も変化してきていることが歌詞からも読み取れます。まず、「煙草に残る紅のあと」。立ち去った女性が残した煙草です。そして、女性は「もうこれっきり」と自分から縁を断ち切って去っていきます。戦前、ましてや江戸時代にはあり得なかった情景なのではないでしょうか。小唄を四半世紀嗜んできて、古典が描く男女の情景にどうしても共感できなかった身にはすーっと入ってくる世界です。

写真は、稽古のあと稽古場近くのタップルームで頼んだ「Masterpiece Dual」と命名されたAmerican IPA。名古屋のY Market造。いかにもAmerican IPAなホップのトロピカル感とガツンとくる苦味。アルコール度9.0とかなり高め。アブナイ。

うしとら

京都に行く楽しみの一つは、馴染みのタップルーム(生のクラフトビールを飲ませる店)。今日は、『うしとら』という栃木のブルワーと京都で大人気という夷川餃子のコラボ。

一杯目は、『セニョール三快天』というMexican Lager。メキシコのビールといえばコロナ。ライムを入れてラッパ飲みがお決まり。ということでか、ライムを入れているとのこと。キレキレ。店には、栃木からブルワー自身がプロモーションで来京。直々の話を聞きながらのビールはまた違った味わい。

写真は、うしとらブルワーのオオクマくんとのスーショット。