雨男

白状しますと私は「雨男」です。これまで関わった茶会の半分以上は雨でした。今年も、茶道宗徧流関東地区の代表として、三月に護国寺で流祖忌を運営したのですが、三月とは思えない冷たい雨でした。外気温は2度とも。四月には京都・南禅寺での宗徧流全国流祖忌で全国の門人を代表して献茶を奉仕しましたが、この日も雨。

今週末には、東京九段・靖国神社で宗徧流家元献茶式が開催されますが、当日は曇りの予報ですが、前日の準備は台風15号の影響による大雨の中での作業になりそうです。負け惜しみではありませんが、雨は日本の自然にとっては「恵みの雨」です。特に、酷暑が続いた今年の夏を経ての雨は恵みの雨。生き生きとした庭の木々を愛でることができそうです。

宗匠からは、雨天の茶会でお客様に「あいにくの雨・・・」とは決して言わないようにと指導されています。雨のなか、一番苦労されているのは遠路茶会に足を運ばれたお客様です。そのお客様に「生憎の・・・」とは言えません。ポジティブに。

今週末の家元献茶式は酷暑を恐れていましたが、どうやら酷暑はなさそうです。雨男の効果です。

ネット中継

6月に二年ぶりにイスラエルを訪れました。目的は、30年来年の友人の長男の結婚式。この翌週にイスラエル軍によるイラン核施設への攻撃により戦争がはじましました。滞在中は、その予感さえ感じられない平和な日々でした。

それはさておき、戦争も終わり新郎新婦はハネムーンに出発しますが、その目的地になんと日本を選んでくれました。当然ながら獨楽庵に招待し、茶道体験をしてもらおうと考えています。当日は本格的に茶事の流れで。後座は、茶室にスマホを持ち込んで両親、家族、友人に向けて茶会の様子をネット配信しようと企んでいます。

両親はイスラエルとモスクワ。友人はそれこそ世界中に。時差を考慮するとキリがないのですが、13時30分頃から後座入りしようと思います。これなら、イスラエルとモスクワは午前7時30分。ニューヨークは深夜12時半(のはず)。

どうなりますやら。

灰の手入れ

この時期になると、灰の手入れをします。炉に入れていた灰、風炉で使った灰。全ての灰を篩にかけ、大きなタライに入れます。タライに水を注ぎ、灰を攪拌させると時にブクブクとアクが浮かび上がってきます。この上澄みを捨て、真水を注ぎ灰を攪拌。この作業を4、5回繰り返すと、上澄が透明になってきます。

そうしたら、ドロドロになってタライの底に沈んでいる灰を取り出し、簀に敷いた新聞紙の上に薄く伸ばしていきます。これを一昼夜ひだまりにおいて乾かします。カラカラに乾かすのが秘訣。このカラカラに乾いた灰を再びタライに入れ、ほうじ茶を加えながら砕き揉んでいきます。

こうして湿り気のある綺麗な灰が出来上がります。この灰は甕に入れて保管し、ことあるごとに使用します。ほうじ茶で揉んだ灰、しばらくは湿っていますが、年を越すあたりで乾いてしまいます。湿し灰が本格的に必要になるのは風炉になってから。なにしろ、灰が湿っていないと風炉の中に灰山が作れないのです。つまり、湿した灰が必要な時には夏の炎天下で一所懸命湿した灰はすでに乾き切っているので、再度その灰にほうじ茶を注ぎ揉んで湿し灰を作ることになります。

ではなぜ、夏の暑い盛りに灰をカラカラに乾かした上で、ほうじ茶を注いで揉みに揉んで湿し灰を作るのでしょうか。それは、湿した灰が主眼なのではなく、一年間使った灰を篩い、洗い、揉んで灰を仕立てていくの工程なのです。こうした手入れをうけた灰は一眼でわかります。だから、茶人は炭点前の時に炉中を拝見し、まずもって手入れの行き届いた灰を褒めるのです。その時に、炉中の灰が何年もほったらかしにされていた灰であったら、客はどう感じるでしょうか。

灰の手入れにお金は掛かりません。せいぜい、ほうじ茶くらいです。しかし、想像を絶する時間が必要です。お金では解決できないことに拘る。これが侘び茶なのではないでしょうか。