クラフトビール

お酒は何が好きですか?と問われると今は「クラフトビール」と答える。クラフトビールとは、その“クラフト“が暗示するように、こだわり、職人気質 などがキーワードになる、小規醸造家が産み出す個性豊かなビールである。一頃日本中に生まれた「地ビール」とは一線を画する。

我が町八王子でも、三件の醸造所があり、生のクラフトビールを飲ませる専門店(タップルームと呼ばれる)は、知っているだけでも四軒。他の酒と並べてクラフトビールを提供する店に至っては何軒あるのか想像もつかない。

聞き齧った話をまとめると、ビールの醸造方法には大きくエールとラガーの二つがある。エールは上面発酵、ラガーは下面発酵。どう違うのかははっきりわからないが、上面発酵の方が概して容易に醸造できるらしい。その代わり、雑味が伴う。まあ、これがビールの個性といえば個性なのであるが。一方、ラガーは澄んだキレが売りである。とある、クラフトビール界の泰斗は、ラガーを例えて帝国ホテルのコンソメスープと言った。なるほと、的確な例えだと思う。澄んでいて、極めて美味なるもどこにも尖ったところがない。一見何の変哲もないが癖になる。だが、作るのには膨大な手間が掛かる。

ちなみに、日本の大手四社のビールは全てラガータイプであり、その中でもピルスナーというタイプ。その狭い領域で大会社が競い、差別化を企てているのだから物凄い業界といえよう。一方のエールの領域は限りなく広く見える。いわばブルーオーシャン。小規模醸造家が競うにはこちらの方が理にかなっている。という訳なのか、クラフトビールの大半はエールタイプである。

大英帝国で親しまれたエールタイプの雄ペール・エール。これをインドの同胞に届けようとすると、どうしても高温の地域を通らねばならず品質劣化が甚だしい。これの解決策として、ホップを増量したとこと、華やかで苦味の強いビールが出来上がって人気を博した。これがインドのペール・エール。インディア・ペール・エール、略してIPA。これはビール好き各人に異論はあろうが、わたしはIPAを自分の中の基準に置いている。IPAに対してどう違うか、ということで星の数ほどもあるビールを識別しているわけである。

お化け

花柳界には、節分の日に芸者衆が仮装して福を呼び込もうという風習があります。このことを
「お化け」と称する花柳界は多いと思います。八王子には、古くからの花柳界があります。織物で栄えた頃には百名を越す芸妓が花を競ったと言われていますが、その後世の中の変化とともに花柳界も縮小。一時は芸妓の数も10名を割ろうかというところまで落ち込みました。

そこで奮闘したのが、今や八王子花柳界の代名詞でもあるM姐さんである。手作りのポスターを掲示したり、ネットを活用したり、M姐さんを慕って集まった芸者の卵達はM姐さんの芸に対する真摯な態度を目の当たりにして皆稽古に励み、今や芸のレベルでは関東随一とさえ思います。


八王子花柳界の「お化け」が違うのは、単に仮装するだけではないこと。皆、仕事、お稽古で忙しい中時間を捻出して早くから出し物の練習を積んできます。かつては、二人一組になって贔屓に披露してまわりましたが、ここ数年は大きな会場で全員で寸劇を披露するスタイルに変わりました。


写真は、水戸黄門を題材にした去年の出し物。今年は、獨楽庵がありますので「お化け」にはお目にかかれないと思いますが、成功を祈っています。

Knowledge Navigator

生成AI話の続き。ChatGPTを使いこなしている様子を見て、すぐに頭に浮かんだのは”Knowledge Navigator”。Appleが1988に発表したコンセプトムービーである。

/https://youtu.be/yc8omdv-tBU?si=PExrtjjNdv4nceqO

大学教授らしき主人公が、母親の誕生日というパーソナルな要件をこなしつつ、大学でのプレゼンテーションの情報を集め、同僚の研究者とディスカッションしつつプレゼンテーションへの参加を依頼するというストーリーである。中心になっているのは、教授の机の上にある大型液晶を備えたデバイス。どうやら自然言語を理解できるらしい。また、教授の指示に従って情報を集めたり加工したりする。

情報を検索し、加工するのはまさに、今話題の生成AIである。しかし、どうやらこのコンセプトの中心は、残念ながら「情報」ではなくスケージューリングらしい。いわば、電子的なオーガナイザー。その証拠に、このコンセプトムービーの4年後にAppleがKnowledge NavigatorのリアルとしてアナウンスしたNewtonは、サブネームのMessage Pad、Personal Digital Assistance が暗示するように、メッセージ(メール)のやり取りとスケージューリング(カレンダー)が主要なアプリケーションである。2025年の現在、スマートフォンに標準で備わっている機能とも言える。Knowledge Navigatorの志の高さに比べて、手書きでできていたものを単にデジタルにしただけのNewtonは、大方の予想通り大失敗に終わった。

実はコンセプトムービーで重要だったのは、スケージュール管理ではなくて、情報を集めて加工する機能だったのだ。当時のAppleの経営陣は夢のまた夢として一笑に付し、無責任にムービーの賑わせとして加えたその機能こそ本質であったのだ。

スティープ・ジョブスは、1984年のMacintosh発表に際し、未来の技術を見過ごしたIBMの過ちをジョークを交え痛烈に揶揄して見せた。Appleも同様にAIの未来を見逃してしまったと言えるかもしれない。

ジョブスの名誉のために加えておくと、Knowledge Navigator当時のApple CEOは、ジョブスが三顧の礼を持ってPepci Coから迎え入れたジョン・スカリー。そのスカリーによりジョブスがAppleを追われてNeXTを立ち上げた時期である。つまり、ジョブス不在のApple。