能楽を稽古して思い知ることは、舞は型の組み合わさせであるということ。「サシ込」「開き」「アゲ扇」「左右」「角トリ」・・・ であるから、各々の型を正確に身につけることが求められる。そして大事なことは、一つの型をしっかりとまとめてから次に型に移ること。

実は、これは茶道の点前でも同じ。点前は、「型」に分解することができる。そして、その型を正確に身につけることが、実は上達の近道なのだと思う。その上で、順番を覚えること。これは、俯瞰すれば、どんな複雑な点前でも構成は同じ。それぞれに、複雑な型が紛れているので難しく見えるが、分解すればやはり「型」の組み合わせなのである。その上で、使う道具に固有の扱いがある。

稽古をしていて共通してつまづくのは、柄杓の扱い。柄杓の扱いという「型」には、点前に求められる体の使い方のエッセンスが詰まっている。次回の稽古では、基本的な「型」の徹底を図ることにしようと思う。

掛け物

10月の茶会に向けて遅まきながら会記の固めに入っています。茶室の床が広かった記憶がありましたので、対幅を使おうと考えていました。

中国南北朝時代の詩人、「陶淵明」が酒の壺を抱えて何ものかを眺めている絵と菊の絵の対幅です。今年は、閏月があり旧暦9月9日は新暦では10月の末になるとのこと。それなら菊の絵でも間に合います。菊は他人と争わず、凛とした花。「陶淵明」も菊に例えられえる人物です。「これで掛け物は決まり」と安心していたところ、「いや待てよ」と茶室の間取りを調べてみたところ、広いとの印象だった床の間は一間床でした。

一間の床に対幅は窮屈に見えそうです。残念ですが、「陶淵明」は却下。一から選び直しです。

引き続き、能楽の話

noteにも書きつずっていましたが、昨日の舞台稽古で改めて感じたので、こちらでも書いておきます。能と茶道の共通点について。

能の舞は、型の組み合わせです。途中、曲特有の所作が入ることはありますが、基本は型の組み合わせです。型というのは、〈打ち込み〉〈指し込み〉〈ヒラキ〉などの決まった所作です。対する茶道の点前も型の組み合わせです。点前を稽古していると、どうしても流れに意識が行きがちで、型の組み合わせであるということを忘れがちです。

能も茶道も、一つ一つの型を正確に体に染み込ませることが肝要です。そして、型であるからには、一つの型が終了するまでは次の型を始めないということを肝に銘じる必要があります。流れに意識がいくと、どうしてもその点が疎かになります。

現在、11月24日の銀座・観世能楽堂の舞台に向けて稽古も佳境に入っていますが、能面をつけて舞う時には、常に柱を確認しながら動くことも必要になります。能面をつけると、顔の前5センチ位のところにある2、3センチの穴から覗く景色が全てです。そのような状態では、動作特に回転を伴う動作はゆっくりと柱を確認しながら舞わないと柱を見失ってしまいます。柱を見失ったら最後、能舞台からの転落もあり得ます。柱に衝突することもあるでしょう。あるいはお囃子方と接触してしまうかもしれません。このような視界が限られる、緊張状態で舞うのはかなりの精神力が必要です。それと同時に、基本をしっかりと反復すること。決められた歩数を決められたとりに進むこと。

宗徧流では、電灯を消した自然光下での茶席が原則です。建物によっては、陽の光が十分に入らず暗闇になってしまう場合もあります。その時には蝋燭に火を灯しますが、それでも視界十分とは言えません。そのような状態で、粗相なく点前を進めるためには、やはり基本の型の反復が必要です。

視界が十分にある状態では、このようなことを意識することはありません。見て確認すればいいのですから。視界が限られた状態での稽古。気付きは沢山あります。能でも茶道でも。

◉松響会(林喜右衛門社中の素人会)
 日時 東京銀座・観世能楽堂(GINZA SIX地下3階)
     11時頃より番組が始まります。
     私は午後5時頃の出番だと思います。
 入場料 無料、どなたでもご覧になれます

当日、銀座に御用があれば、観世能楽堂にお立ち寄りくだされば幸甚でございます。