今日の獨楽庵 – 2024年11月27日

昨夜の雨が上がり青空が広がっている八王子です。松露が朝日で輝き清々しい秋の朝を迎えました。

今日は、正午に2名のお客様をお迎えします。いつも通り、一汁三菜のミニマルな懐石でコンパクトな茶事を催します。庭が色づきつつある獨楽庵。秋のひととき、獨楽庵は茶の湯の楽しみを再確認する機会になるかもしれません。

京都でセミナーに参加してきました

昨日(11月25日)は獨楽庵をお休みにして、京都でセミナーに参加してきました。主催は、公益社団法人・有斐斎弘道館。江戸時代の儒学者・皆川淇園が開いた学問所跡を保存、活用していこうという有志の集まり。獨楽庵としても、見習うところは多いと思う。

セミナーは題して「英語で伝える茶の湯のこころ」。外国人にいかに茶の湯の魅力を伝えるかという実践的なセミナー。講師のクリスティーナ氏は、チェコ出身の裏千家茶道家。後で知った事であるが、スータートは宗徧流だったとのこと。事前に知っていれば・・・。

前半は座学で、一般に茶の湯の魅力と言われていることや、外国人をおもてなしする際のポイントなどを英語を交えて講習。参加者は、実際に外国人のお客様に茶道体験を提供している方や観光ガイドをなさっている方もいて、質疑も実践的。後半は、寄付→露地・腰掛待合→茶室と移動して、弘道館が外国人のお客様に提供している「体験」をお役様の立場で体験。寄付きでは、しっかりと茶の湯について英語で解説も。露地では、「蹲」の体験。茶室では、クリスティーナ氏の点前で薄茶を一服。

獨楽庵では、茶室では一切の電灯を消して自然光だけで茶を差し上げている。光が足りなければ燭台を出す。この暗室に蝋燭という室礼は、海外の方々には「宗教的」な印象を与えるのではないかという疑念があったが、それについてはクリスティーナ氏に一掃して頂いた。寄付、茶室ではクリスティーナ氏も電灯を消してお客様をお迎えしていた。参加者との質疑の中で、外国からのお客様は最初は緊張もあり集中しているのだが、「躙口」で昂揚してしまい、茶室では集中がなくなり雑然としてしまうという相談があったが、電灯を消す(暗くする)というのは一つの解決策になるということは参加者の間で共有されたようである。

提供する「体験」の中身、スタンス、想定するお客様が微妙に異なるので、全てが参考にできるということではないが、大変有意義なセミナーであったと思う。この成果を獨楽庵でも生かしていきたいと思う。

今日の獨楽庵 – 2024年11月24日

小春日和の八王子。今日の獨楽庵は一客一亭。初座の床は大徳寺翠巌和尚の『力囲(国かまえの中に力』 「りきい」と読む。利休の遺偈「人生七十 力囲希咄 云々」にも出てくる。読めはしないが、翠巌和尚の賛から想像するに、利休の自害に際しての心境のようである。それまで身につけた全てを投げ捨てて、力囲の境地に達するということらしい(間違っていたらごめんなさい)。

この「力囲(りきい)」という言葉は、宗徧流にとってはとても重要な言葉なのである。それは、玄伯宗旦と弟子の山田宗徧が、ある時、利休の遺偈に接し、山田宗徧が「力囲」をとって「力囲斎(りきいさい)」と名乗り、宗旦は「咄」ととって「咄々斎(とつとつさい)」と名乗ったという故事による。ちなみに、当代家元考案の立礼机は「力囲棚」と名付けられている。

話が逸れたが、懐石はいつものとおりの侘び仕立て。折敷には向付としてほたて貝柱の昆布締め。飯と汁。汁の実は里芋。煮物は海老真薯、舞茸を添えて。焼き物は鰤の照り焼き。香のもの、湯桶。菓子はいつもの旭苑製で「山茶花」。

後座の床は宗徧流二世・山田宗引作の竹二重伐。花は、白玉椿。茶入は瀬戸の累座肩衝。薄茶盛は、宗和好みの溜塗り面通。茶碗は、幕末の関白・鷹司政通公の小ぶりな赤楽茶碗。この時期の一客一亭にはもってこいの茶碗。茶杓は、成瀬宗巨 銘「無一物」。

一客一亭。お客様は「贅沢すぎる時間」と感謝されるが、それは亭主も同じ。一客一亭の心に立脚した茶の湯でありたいと思う。