日常の茶

一般社団法人 獨楽庵が活動を開始して以来、試行錯誤を繰り返しながら、現在は「獨楽庵茶会」を中心にとした運営に落ち着いています。獨楽庵茶会とは、獨楽庵友の会の会員様をお客様に、一汁三菜の侘び仕立て懐石による「小茶事」です。「小」と加えているのは、今日の標準的な茶事と比較すると、「亭主迎付け」、「炭点前」が省略されていることによります。初座の懐石も、預鉢、強肴、八寸、千鳥の盃などを廃止、飯、汁、向付、煮物椀、焼物、香の物、湯桶によるミニマルな侘び仕立てにしています。これは、亭主の力量ということもありますが、懐石は小腹を満たす程度にし、後座の御茶に重きを置きたいという思いも込めています。初座の懐石は広間で、後座は小間で行うため、必然的にお客様の面前での炭をつぐこと(炭点前)も必要なくなります。

このような構成だと、御茶に重きを置き、お客様との対話を楽しんでも三時間程度で終了します。古来、「茶事は二とき(4時間)を超えぬこと」と諌めされてきました。4時間を超えれば、朝会が4時間を超えれば、正午の茶事に差し障り、正午の茶事が4時間を超えれば夜咄に差し障るからです。

今日、茶の湯の現場は「ハレ」だけのものになってしまいました。「大寄せの茶会」にしても、「茶事」にしても、特別な事になっています。これに対して、獨楽庵では「日常の茶」を模索しています。獨楽庵風の小茶事である、「獨楽庵」茶会であれば亭主一人でも一日三席(朝茶、正午、夜咄あるいは飯後)開くことができます。しかし、一方で「ハレ」の席のように一つの席に向けて料理を吟味し、道具を選ぶことはできません。どうしても「日常感」は否めないと思います。そこを出発点として、茶会(茶事)を探求していきたいと考えております。よりよいものにするために、皆様のご指導、ご助言、大歓迎です。

太柱席 獨楽庵

11月は、躙口、中柱のある三畳台目席「船越」を使いましたが、この土日でもう一つの小間「獨楽庵」の準備を進めます。「獨楽庵」は「船越」と同じく三畳台目ですが配置が異なり、さらに庭に向けて壁ではなく、障子の構えですので、開放的で洒脱な感じがします。「船越」が“茶道“の席であるとすれば、獨楽庵は“数寄“の席と言えるかもしれません。獨楽庵でと思うと、なぜかイタズラ心が首をもたげてきます(笑)

12月は獨楽庵を中心に使う予定ですが、右勝手(いわゆる逆勝手)向切りですので、点前は少々リハビリが必要かもしれません。ご容赦くださいませ(左勝手の船越でも怪しいところはありましたが(苦笑))。

獨楽庵茶会

獨楽庵茶会は、「獨楽庵友の会」の会員の皆様と茶の湯を楽しみながら茶の湯文化を高め広げる活動でもあります。

現在、茶の湯に接するには主に二つの機会があります。一つは、いわゆる「大寄せ茶会」。茶の湯に接点のない方々が「お茶」というと思い浮かべるのはこの大寄せだと思います。数百名のお客様が集まり、席には10名、あるいは数十名になることも。菓子が出され、点前が始まり客は亭主と道具について問答をします。

もう一つは「茶事(ちゃじ)」。前半で懐石、後半で濃茶と薄茶が出されます。客は通常5名以下。一人の場合もあります。昔はこの「茶事」が茶の湯の一般的な形式で「茶会」といえば、今では「茶事」と呼ばれている形式を指しました。この茶事ですが、現在は贅沢になり料理の質、量ともに十分以上であると思います。ですから、茶事=特別な茶、格別なおもてなし というイメージもできています。

獨楽庵では、どちらでもない。ある意味、日常の中の茶の湯を試みています。懐石は、強肴、預け鉢、八寸などを排し、一汁三菜に侘び仕立てに。茶事では、亭主の迎え付けが行われ、その時、主客は初めて顔を合わせます。これは、とても風情のある趣向だと思いますが、お客様にも慣れが必要です。獨楽庵では、一亭(今風に言えば“ワンオペ“)ですので、露地に出られたお客様をナビゲートすることも叶いませんので、現在のところ寄付き(ソファー席)でご挨拶して、そのまま広間(楓の間)にお移り懐石をお召し上がり頂きます。茶事では、炉であれば懐石の前、風炉であれば懐石の後に炭点前をしますが、獨楽庵茶会では懐石(初座)とお茶の席(後座)を分けていますので、炭点前はしておりません。

中立の後、鳴り物にて茶室にお入りいただき、濃茶、薄茶をお出しします。茶室は、11月は三畳台目の船越を使用しています。12月からは太柱の獨楽庵を使おうと考えています。後座でゆっくりお話をしながら、濃茶と薄茶を召し上がって頂いても、トータルで2時間から2時間半です。茶事の要素をいくつか省略してコンパクトにしていますので、「小茶事」とでも呼べるかもしれません。

獨楽庵茶会=小茶事。