露地の作法

茶席初体験の方や初心者の方は、作法に拘らずに気持ちを楽にして、感性の感度を上げた方が楽しめるとお話ししています。

それでも、知っておいた方が良い作法はいくつかあります。写真の石は、「留石(とめいし)」あるいは「関守石(せきもりいし)」と呼ばれるもので、座りの良さそうな石を縄で結んでいます。この石の意味は「通行禁止」です。露地(茶庭)には、幾つもの経路が設定されているものがあります。獨楽庵の露地もそうです。そのような場合に、お客様が経路を間違えたり、経路を見つけるのに苦労なさらないために置かれるのが留石です。留石が置いてある経路を避ければ、自ずと目的の場所に到達できるという仕組みです。

冬支度

数週間前は木々の葉が色付き秋らしい風情を見せていましたが、葉も落ちきり松の枝も雪に備えて剪定され、すっかり様子が変わりました。冬を迎える獨楽庵です。

冬は寒いですが、寒さを補って余りある美しさがあります。陽が落ちるのが早い分、茶室の中は暗くなり蝋燭の灯が美しく映ります。炉の中の炭も一層美しく。なにしろ、釜の蓋を開けた時の湯気の白さが美しい。

そろそろ暖を取るための手炙りを準備しようと思いますが、寒さの中背筋を伸ばす気持ちよさも体験して頂きたいと思います。

歳暮の茶会

12月の体験茶会、21日からの後半は今年一年を振り返りながら「歳暮」の趣向にしようと思います。

寄付は、仰木露堂の兎の画賛。卯年の歳暮もありますし、兎の餅つきは「豊年」につながります。獨楽庵を北鎌倉から移築し、庭を作り数寄屋を配したのは仰木露堂の弟子、日本建築家の藤井喜三郎です。新しい命を吹き込まれた藤井の作品。仰木の目にはどう映るのでしょうか。

個人的には、今年はなんと言っても「橋弁慶」です。2年間の稽古の成果を渋谷・セルリアン能楽堂で披露することができました。橋弁慶は観世初心謡本では、「鶴亀」につぐ2番目ですが、謡と能では難しさは段違い。装束をつけて、謡ながら長刀を振り回すのは体幹が必要です。50分という短い曲ながら、橋弁慶にはしっかりと前シテ、後シテがあり中入りの間狂言中に衣装替えもあります。見所にいるとあれだけ長く感じられた間狂言が一瞬に感じました。衣装替えして糸で固定して出来上がったと思ったら、謡を復習する余裕さえなく橋掛に「射出」されました。そんな精神状態でもなんとか乗り切れたのは「お囃子」と「地謡」の存在。真っ白な頭でも自然に体が動いていました。能、弁慶関係の道具を見つけて使いたいと思います。

お軸は何にしますか。一人で茶室に在し、炉に火をくべ湯を沸かし客を待つ。省略することなく、愚直にやるべきことをやる。仏の修行もそうなのかもしれないと思いました。仏の修行を怠ることを「退転」というそうです。「退転」しないから「不退転」。

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