師走の獨楽庵

獨楽庵(太柱席)に五徳を据え、お客様を迎える準備ができました。十二月は獨楽庵を中心にお茶をお出ししようと思います。腰掛からは少々距離がありますが、ほんの一瞬、深山に迷い込んだ気分を味わえるかもしれません。亭主がいうのも何ですが、駅から徒歩圏内にこのような環境が残されているのは貴重です。お茶というと、室内の道具に気が入ってしまいがちですが、木々を、木漏れ日を眺めるのも心が洗われる気がします。

いまのところ、12月は15組のお客様をお迎えする予定ですが、まだ空席がございます。また、後半には夜咄もいたします。

獨楽庵で、ご友人と一年を振り返っては如何でしょうか。

太柱席 獨楽庵

11月は、躙口、中柱のある三畳台目席「船越」を使いましたが、この土日でもう一つの小間「獨楽庵」の準備を進めます。「獨楽庵」は「船越」と同じく三畳台目ですが配置が異なり、さらに庭に向けて壁ではなく、障子の構えですので、開放的で洒脱な感じがします。「船越」が“茶道“の席であるとすれば、獨楽庵は“数寄“の席と言えるかもしれません。獨楽庵でと思うと、なぜかイタズラ心が首をもたげてきます(笑)

12月は獨楽庵を中心に使う予定ですが、右勝手(いわゆる逆勝手)向切りですので、点前は少々リハビリが必要かもしれません。ご容赦くださいませ(左勝手の船越でも怪しいところはありましたが(苦笑))。

迎付け〜初座入

今日の獨楽庵は、のんびりと稽古をします。ようやく小間に相応しい陽気になったので、亭主迎付け〜蹲〜初座入りの稽古をしようと思います。

寄付きに集まった客は正客のリードで露地に出て、腰掛待合で気持ちを整えます。茶室からは亭主が現れ、蹲を清めた後、羽根で露路を清めながら歩み寄り、出会い石の前で主客が無言で挨拶をします。客と亭主の最初の出会い。亭主が茶室の戻るのを見届けた客は、襖が閉まる音を合図に蹲に進み身を清めて、いよいよ潜から席入りします。獨楽庵の潜のある小間(「船越席)」では潜から床を正面に臨みます。床には軸が掛かっています。その軸は、今日の茶事の趣向を暗示するものでもあります。

亭主迎付け〜初座入りは、茶事のハイライトの一つです。客は今日の茶事への期待を、亭主は今日の茶事への覚悟を秘めて、出会い石で挨拶。全て無言ですが、饒舌な時間です。

獨楽庵で、社中稽古をなさってみては如何でしょうか。友の会正会員(B)は、年に一日獨楽庵を貸切でご利用いただけます。

*宗徧流では、いわゆる「にじり口」を「潜(くぐり)」と呼びます。流祖・山田宗徧が著した『茶道便蒙抄』『茶道要録』に記述があります。