塵と炉縁の関係について

遅まきながら、獨楽庵の炉縁を生地のものに入替ました。茶道宗徧流の流祖・山田宗徧は二冊の茶道指南書を残しています。そこには、炉縁について、「正月までは塗縁、正月を過ぎたら洗縁」と書かれています。理由は、春になると塵が舞うから。洗縁とは洗える炉縁、つまり木地のことと解釈しています。

宗徧流は塵を嫌います。例えば、重ねた酒杯の一番上の杯に露をはり、順にしたの杯に落としていく作法も塵を嫌うからではないかと解釈しています。かつて、四つ椀と言われていた頃には懐石の器には全て蓋がついていました。しかし、杯に蓋をすることはできません。それで露を張ったのではないかと思います。つまり、露は蓋の代わり。

宗徧翁は、「正月」を境にしていますが、これは旧暦。新暦では節分を境と考えています。

炉縁で面白いのは「侘び人は、木地に軽く漆をかけた掻き合わせ一つでよろしいと」。侘び人、つまり裕福でない者は、炉縁を二つも持たなくてよろしいということ。

今日の獨楽庵 – 2025年2月8日

今日は4名のお客様をお迎えしました。鍵を忘れ、さらに出汁を引くための昆布も忘れ朝からドタバタでした。こういう心の乱れは、おもてなしに顕著に現れます。何事もしっかり準備して事に臨まなけばならないと、改めて初心に帰りました。

「わたし失敗しないので」というセリフで有名な米倉涼子さん演じるテレビドラマDr.Xの主人公大門未知子医師の失敗しない理由は、彼女が天才だからではありません。どんな手術でもあらゆるトラブルを想定してあらかじめ打つ手を用意しておく。これに尽きます。茶事に臨む時も全く同じ。反省です。

木、金曜日は地元の小学校での茶道体験授業でした。6年生3クラスと特殊学級を対象に茶道体験をしてもらいました。メインイベントは、自服。初めて目にするであろう茶筅を手にして、抹茶とお湯が入れられた茶碗でお茶を点ててみる。初めてでも手首をうまく使って上手に点られる子もいれば、腕を動かしてしまい全く点たない子も。それでも、一口めは「苦い!」の大合唱から全員おかわりを所望(笑)楽しいとともに、茶道の原点に戻れるひとときでした。

6年生は一クラス31名。加えて、担任の先生、見学に来た先生、卒業アルバムのための撮影隊のお母さん達にもお体験してもらいましたので、数茶碗は40客持ち出しました。大寄せ茶会級です。ですからその後は、座敷に茶碗を広げてしばし茶碗を休ませます。

そして、16日(日)は、獨楽庵風大寄せ茶会〜倶楽茶会。初めての試みですので、運営を含めドキドキです。ご迷惑をかけないよう、しっかりシュミレーションして当日に臨もうと思います。

第一回倶楽茶会
日時 2月16日(日) 午前10時より
会場 獨楽庵 八王子市元横山町1-14-9 JR/京王八王子駅より徒歩10分
会費 6,000円(濃茶、薄茶各一席)

席に若干の余裕があります。詳細・お申し込みは dokurakuan.com/kuraku-chakai まで

小学校で茶道体験授業

八王子市内の小学校に出張して、茶道体験授業をしています。1校時、45分という限られた中でいかにしたら茶道の楽しさを伝えられるか。試行錯誤の繰り返しです。今年のプログラムは、自己紹介した後、点前のデモンストレーション、全員でお菓子の頂き方を稽古しつつお菓子を食べて、いよいよメインイベントの自服。初めて手にする茶筅。手首から先を上手く使って点られる子もいれば、腕を大きく動かしてしまうので、肝心な茶筅は振れず疲れるだけでまったく点たない子まで様々。自分で点てたお茶を飲んで、まずは「苦い!」の大合唱。でも、「お替わりしたい人?」と聞くと全員が2服目にチャレンジします。抹茶の味だけでなく香、舌触り、色も覚えていて欲しいですね。

小学生を相手にしていて、一番楽しいひとときは質問の時間。思ってもみない質問が飛んできて先生泣かせですが、確信をついているので自分のためにも真剣に答えます。その中で考えさせられたのは、「なぜお茶は何百年も続いているんですか?」という質問。「お茶が魅力的だから」と簡単にあしらうこともできますが、それでは意味がありません。質問の本意は、「お茶の魅力はなんですか?」という問いであるから。

少し難しいですが、次のように答えました。
”一口にお茶(茶道)といっても、その捉え方は人それぞれです。例えば、樹木希林さんが主演した「日々是好日」という映画の主人公の先生のように、お茶のある空間、空気が好きでこに身をおくことがお茶という方もいます。一所懸命料理をつくってお客様をおもてなししたい方もいます。道具を選んで何かを伝えたいという方や、純粋に道具が好きという方もいます。色々な楽しみ方があって、それぞれに喧嘩するのではなく、それぞれの楽しみ方を尊重するから続いてきたのではないでしょうか。600年の歴史のなかで、時代によって主流になった楽しみ方はありますが、それでもそれ以外の楽しみ方を否定するのではなく、お互いを大切にしてきました。こうして、中心になる楽しみ方は時代時代で入れ替わってきましたが、全ての楽しみ方は脈々と続いてきました。その結果、600年経った今でもお茶(茶道)という文化が続いているのだと思います”

争わないこと。他人を尊重すること。これが茶道の魅力のひとつだと思っています。