散るは浮き

このブログでも、何度か書いたかと思いますが記念すべき小唄第一号は、「散るは浮き」という曲です。江戸の末期、二代目清元延寿大夫の娘、お葉が父の遺品のなかから松平不昧公から贈られたという歌を見つけ、その歌に節をつけたものです。

不昧公の歌は「散るは浮き 散らぬは沈むもみぢ葉の 影は高尾か山川の水」ですが、お葉ささんが優れているのは、最後の一句「山川の水」を「山川の水の流れに月の影」と変更しているといことろです。水に映る月を加えることで、情景に奥行きができたと思います。

さて、能書だけでは伝わらないと思うので、動画を作ってみました。唄っているのは、小唄松峰派家元・二代目松峰照師匠です。松平不昧公にちなんで、不祥私のお茶のお点前動画をつけてみました。

お化け

花柳界には、節分の日に芸者衆が仮装して福を呼び込もうという風習があります。このことを
「お化け」と称する花柳界は多いと思います。八王子には、古くからの花柳界があります。織物で栄えた頃には百名を越す芸妓が花を競ったと言われていますが、その後世の中の変化とともに花柳界も縮小。一時は芸妓の数も10名を割ろうかというところまで落ち込みました。

そこで奮闘したのが、今や八王子花柳界の代名詞でもあるM姐さんである。手作りのポスターを掲示したり、ネットを活用したり、M姐さんを慕って集まった芸者の卵達はM姐さんの芸に対する真摯な態度を目の当たりにして皆稽古に励み、今や芸のレベルでは関東随一とさえ思います。


八王子花柳界の「お化け」が違うのは、単に仮装するだけではないこと。皆、仕事、お稽古で忙しい中時間を捻出して早くから出し物の練習を積んできます。かつては、二人一組になって贔屓に披露してまわりましたが、ここ数年は大きな会場で全員で寸劇を披露するスタイルに変わりました。


写真は、水戸黄門を題材にした去年の出し物。今年は、獨楽庵がありますので「お化け」にはお目にかかれないと思いますが、成功を祈っています。

Knowledge Navigator

生成AI話の続き。ChatGPTを使いこなしている様子を見て、すぐに頭に浮かんだのは”Knowledge Navigator”。Appleが1988に発表したコンセプトムービーである。

/https://youtu.be/yc8omdv-tBU?si=PExrtjjNdv4nceqO

大学教授らしき主人公が、母親の誕生日というパーソナルな要件をこなしつつ、大学でのプレゼンテーションの情報を集め、同僚の研究者とディスカッションしつつプレゼンテーションへの参加を依頼するというストーリーである。中心になっているのは、教授の机の上にある大型液晶を備えたデバイス。どうやら自然言語を理解できるらしい。また、教授の指示に従って情報を集めたり加工したりする。

情報を検索し、加工するのはまさに、今話題の生成AIである。しかし、どうやらこのコンセプトの中心は、残念ながら「情報」ではなくスケージューリングらしい。いわば、電子的なオーガナイザー。その証拠に、このコンセプトムービーの4年後にAppleがKnowledge NavigatorのリアルとしてアナウンスしたNewtonは、サブネームのMessage Pad、Personal Digital Assistance が暗示するように、メッセージ(メール)のやり取りとスケージューリング(カレンダー)が主要なアプリケーションである。2025年の現在、スマートフォンに標準で備わっている機能とも言える。Knowledge Navigatorの志の高さに比べて、手書きでできていたものを単にデジタルにしただけのNewtonは、大方の予想通り大失敗に終わった。

実はコンセプトムービーで重要だったのは、スケージュール管理ではなくて、情報を集めて加工する機能だったのだ。当時のAppleの経営陣は夢のまた夢として一笑に付し、無責任にムービーの賑わせとして加えたその機能こそ本質であったのだ。

スティープ・ジョブスは、1984年のMacintosh発表に際し、未来の技術を見過ごしたIBMの過ちをジョークを交え痛烈に揶揄して見せた。Appleも同様にAIの未来を見逃してしまったと言えるかもしれない。

ジョブスの名誉のために加えておくと、Knowledge Navigator当時のApple CEOは、ジョブスが三顧の礼を持ってPepci Coから迎え入れたジョン・スカリー。そのスカリーによりジョブスがAppleを追われてNeXTを立ち上げた時期である。つまり、ジョブス不在のApple。