茶室の力

茶室と和室を分ける決定的な違い。それは、空間が茶の湯にためにデザインされているかどうか。実際、床間を備えた和室は星の数ほどもあります。例えば同じ八畳の座敷でも、茶の湯のためにデザインされた茶室と和室は違うのです。違いは、茶道具を飾った時に鮮明になります。乱暴に言ってしまうと、茶室にはどんな茶道具を並べてもひとまず様になってしまうのです。ただの和室ではこうはいきません。

それは茶室というものは、数百年の間、茶の湯道具とインタラクトしてきた結果に他ならないと思います。茶室は茶の湯道具を引き立てるように、茶の湯道具は茶室で引き立つように。お互いにデザインされてきたのだと思います。

ですから、できる限り茶の湯は茶室でしたいと思います。そうでなければ、茶の湯の楽しさ、美しさは伝わなないのではないかと思うのです。西洋化が進む昨今。畳のない家も増えています。ですから茶の湯が日常でなくなっていることは否定しません。しかし、それだからこそ、現存している茶室を駆使して茶室で茶の湯をしたいのです。

こんな思いをnote.comに投稿しました。
https://note.com/souyuu/n/n0b52c173cac7?sub_rt=share_pw

観世能楽堂に向けて

10月12日の東京茶道会、19日の神奈川県戦没者慰霊堂 慰霊茶会と二週連続で席主を勤めました。今週末は、伊勢神宮で家元献茶式。来週からは能の稽古に集中です。11月24日の松響会@観世能楽堂まで泣いても笑ってもあと一ヶ月。悔いの残らぬように自主練に集中します。

私がシテを舞う『猩々』は中国の昔話を題材にしたものです。瀋陽という村に住む高風(こうふう)ある夜、不思議な夢を見ます。揚子のほとりで酒を売れば貴方の家は栄えるだろうというのです。夢のお告げ通り、高風が揚子の市で酒を売っていると、毎日大酒を飲みにくる男がいる。不思議に思って、尋ねると自分は水の中に住む猩々だと伝え、再会を約束して去っていきます。約束の日に高風が揚子のほとりで待っていると猩々が現れ、友との再会を喜び、酒の壺を渡して別れる。その壺は酒を汲んでも汲んでもなくならない不思議な壺でした。その壺のおかげて高風の家は代々栄えたということです。

猩々は、一種の妖怪です。ですが、この曲は家が代々栄えるという祝言曲として有名です。今回の松響会は師匠の十四世林喜右衛門師の襲名記念。祝言曲を舞わせていただく永栄ですので、その気持ちで舞いたいと思います。

十四世林喜右衛門襲名記念『松響会』
日時 令和7年11月24日(振替休日) 9時半開演 *私の出番は16時頃です。
会場 観世能楽堂 銀座・ギンザシックス地下3階
入場料 無料(出入り自由)

お近くにお出かけの際は、ぜひお立ち寄りくださいませ。

【画像は、観世能楽堂鏡の間から見た橋掛】

松響会東京大会|2025年11月24日

14世林喜右衛門社中の素人会「松響会」。私は能「猩々」のシテを勤めます。会場は、GINZA SIXの地下3階にある観世能楽堂。GINZA SIXは、私の出身大学の前身である「商法講習所」が1875年に創設された場所です。今気がつきましたが、今年は創立150周年ですね。

それはさておき、当日のプログラムが大方決まってきたようです。私の出番は16時頃です。猩々はおよそ50分の曲です。

11月24日(月・振替)、たまたま銀座に御用がございましたら、観世能楽堂にお立ち寄りいただければ幸甚でございます。素人会ですので、入場料はもちろん無料。出入りも自由です。

皆様のおいでを社中一同心よりお待ち申し上げます。