八王子市内の小学校に出張して、茶道体験授業をしています。1校時、45分という限られた中でいかにしたら茶道の楽しさを伝えられるか。試行錯誤の繰り返しです。今年のプログラムは、自己紹介した後、点前のデモンストレーション、全員でお菓子の頂き方を稽古しつつお菓子を食べて、いよいよメインイベントの自服。初めて手にする茶筅。手首から先を上手く使って点られる子もいれば、腕を大きく動かしてしまうので、肝心な茶筅は振れず疲れるだけでまったく点たない子まで様々。自分で点てたお茶を飲んで、まずは「苦い!」の大合唱。でも、「お替わりしたい人?」と聞くと全員が2服目にチャレンジします。抹茶の味だけでなく香、舌触り、色も覚えていて欲しいですね。
小学生を相手にしていて、一番楽しいひとときは質問の時間。思ってもみない質問が飛んできて先生泣かせですが、確信をついているので自分のためにも真剣に答えます。その中で考えさせられたのは、「なぜお茶は何百年も続いているんですか?」という質問。「お茶が魅力的だから」と簡単にあしらうこともできますが、それでは意味がありません。質問の本意は、「お茶の魅力はなんですか?」という問いであるから。
少し難しいですが、次のように答えました。
”一口にお茶(茶道)といっても、その捉え方は人それぞれです。例えば、樹木希林さんが主演した「日々是好日」という映画の主人公の先生のように、お茶のある空間、空気が好きでこに身をおくことがお茶という方もいます。一所懸命料理をつくってお客様をおもてなししたい方もいます。道具を選んで何かを伝えたいという方や、純粋に道具が好きという方もいます。色々な楽しみ方があって、それぞれに喧嘩するのではなく、それぞれの楽しみ方を尊重するから続いてきたのではないでしょうか。600年の歴史のなかで、時代によって主流になった楽しみ方はありますが、それでもそれ以外の楽しみ方を否定するのではなく、お互いを大切にしてきました。こうして、中心になる楽しみ方は時代時代で入れ替わってきましたが、全ての楽しみ方は脈々と続いてきました。その結果、600年経った今でもお茶(茶道)という文化が続いているのだと思います”
争わないこと。他人を尊重すること。これが茶道の魅力のひとつだと思っています。