今日の獨楽庵 – 2024年11月20日

朝から冷たい雨が降る八王子。獨楽庵の庭はしっとりと濡れて急に緑が生き生きと。まさに恵みの雨でした。今日の獨楽庵は一客一亭。数寄話に花が咲きました。やはり、一客一亭が、侘び茶の原点と再確認しました。こうなると、三畳台目でも冗長に感じます。もっとタイトに。一客一亭には、一畳台目がふさわしいのではないでしょうか。これまで使われてこなかった、利休好みの一畳台目席。今年は、積極的に使ってみようと思います。

初座の掛け物は引き続き、大徳寺祥山和尚の『破沙盆』。懐石は、向付にほたて貝柱の昆布締め。煮物は海老真薯。焼き物は鮭の西京付け。菓子は、定番の旭苑「初霜」。後座は船越で。床に宗徧流二世・山田宗引の竹二重伐。山田宗徧は、『茶道便蒙抄』で二重伐は上に花と。下は「入れずとも苦しからず」。これも、他流のお客様との話のタネに。釜は、肩衝。炉縁は南禅寺古材。流祖宗徧は、炉縁について節分までは塗り。立春からは洗縁(生地)と。春になると塵、埃がたつから。炉縁を洗えということか。しかし、侘び茶人は通期で掻き合わせでよいと。侘び茶人は塗りと生地と、二つの炉縁を所持することはできないから。

茶入れは、北村裕庵所持の鷲棗。薄茶盛は、阿古陀。茶平一斎造。水壺は大胆な造形の志野。茶碗は、関白・鷹司政通公の赤楽。一客に適した小ぶりな楽茶碗。

つくづく、現代陶芸家の茶碗は大き過ぎると思う。やはり、芸術家としての血が騒ぐのだろうか。職人に徹した端正で”小ぶり”な茶碗を見つけたいと思う。

今日の獨楽庵 2024年11月18日

今日の獨楽庵は、11時より友の会の正会員様と3名のお連れ様をお迎えしました。軸は大徳寺・祥山和尚一行「破沙盆」。懐石はいつものとおり、一汁三菜の侘び仕立て。今日は、飯、汁(里芋入り)、向付(鯛の昆布締)、煮物椀(海老真薯)、焼物(鮭の西京漬け)、香の物、湯桶でした。菓子は、獨楽庵の定番、西八王子『旭苑』の「山茶花」。楓の間で懐石を差し上げた後、中立。

後座は、三畳台目の船越席にて。床に、宗徧流二世家元・山田宗引の竹二重伐に、白玉椿。釜は肩衝、葵紋。水壺は大胆な造形の志野。茶入は、鈍翁「大夫棗」。東海寺の沢庵和尚遺愛の松をもって渡辺喜三郎作。茶碗は、鷹司政通公の小ぶりの楽茶碗。手作りか。濃茶は宗徧流家元・幽々斎好み「九重の昔」。丸久小山園詰。替茶碗は伊羅保。薄茶盛は先日の建長寺でも使用した阿古陀。輪島・茶平一斎造。薄茶は、濃茶と同じく幽々斎好み「四方の昔」。丸久小山園詰。

獨楽庵茶会は、一般的な茶事と比べ、懐石をシンプルにし亭主向え付け、初炭・後炭を省略したコンパクトな構成とし、その分茶席での対話を充実しようと考えています。

桑心会

昨日の桑心会(くずし字を読み解く勉強会)は、JR中央線の運転見合わせがあり開始が遅れましたが無事終了しました。今回は、小堀遠州の書状を題材に1時間半に渡り丹念に読み込みました。茶人の書状・消息からは当時の人間関係や風習が読み取れ、茶席の話題としても教養としても価値があります。

今年最後の桑心会は12月18日(水)。11時からです。参加費は一回5,000円。一回完結ですので、都合に合わせて参加することができます。一回のみの参加も歓迎です。

令和7年は、毎月第三水曜日を基本に開催します。スケジュールが決定次第、ご案内いたします。事前の知識は不要です。

詳しくはこちらから

獨楽庵では、文化講座、同好会として現在つぎの3つを開講しています。
1️⃣ 桑心会(そうしんかい)江戸時代の茶人の書状を題材に、くずし字を読み解く勉強会
2️⃣ 松峰小唄教室 小唄松峰派家元 松峰照師による小唄教室。随時見学受付中。
3️⃣ 正座不要の本格茶道教室 茶道宗徧流家元 幽々斎宗匠考案の「力囲棚」を使った本格茶道教室。体験会開催中。

詳しくはホームページをご覧ください。【メニュー】→【文化講座・同好会】よりお進みください。

秋の訪れ

庭のもみじが俄かに色づいてきました。朝晩はもちろんのこと、日中でも火が翳ると肌寒さを感じる陽気になりました。本格的に秋の到来ですね。

茶室でも、風炉ですともう少し火が欲しいと思うようになってきます。獨楽庵では、先週炉を開きました。お祝い的なことはしませんが、お客様には亥の子餅をお出しして、多少でも炉開きの雰囲気を味わって頂けたと思います。

これから冬に掛けて、お茶が楽しい気節になります。庭も秋の風情。日暮れれば、露路の行燈や灯籠の美しさを再発見できるとでしょう。

皆様のお出ましをお待ちしております。

小間の茶

茶室には、広間と小間の2種類があることは、茶道を嗜む方であれば誰でもご存じと思う。広間とは、四畳半以上の座敷を指し、それ以下は小間と総称される。

広間と小間の最大の違いは、台子が置けるか否か。茶の湯はひとつには権威発揚の面があることは否定できない。古くは、荘厳な書院に台子を荘ることが権威の象徴であった。台子を荘るための最小の広さが四畳半である。なぜなら、点前座に畳一畳が必要だから。

これに対して、小間の点前座は台目といって畳を3/4に切ったり、向板をはめたりしていることが多い。これは、言ってみれば台子を置けない構えにしている訳である。つまり、小間とは台子との決別。つまり、権威との決別。だから、小間席には亭主の創意工夫が溢れている。それを読み解くのも楽しみの一つであるが、ここではその話には触れない。

言いたいことは、小間は自由な空間であるということ。茶道というと手順や作法に決まり事が多く、数十年も稽古を重ねているものでも息苦しく思うことがあると思う。手順や作法は、いわば権威に付随するもの。小間では、権威を遠ざけて自由に楽しみたいものであるが、そこには最低限の規範がなければならない。無手勝流のアナーキー状態では、お互いに嫌な思いをするだけであろうから。それを明文化したのが手順や作法というものだとは思うが、その一つ一つに厳密であるのではなく、その大元の精神に忠実であるべし。あとは、臨機応変にというのが小間の精神だと思う。

自在

とっておきの自在があります。いつかは、この自在に四方釜を吊りたいと思っているのですが、自在は小間のもの。小間でも中柱のある席には相応しくないと言われます。確かに中柱のすぐ脇に竹の自在が下りているのは気障りです。

というわけで、「船越」はリストから外さざるをえません。では、獨楽庵はどうか。獨楽庵のアイコンは、言うまでもなく興福寺から拝領した太柱です。これだけ主張の強い床柱に対して竹の自在。太柱の強烈な存在感故に自在も活きてくるかもしれません。

そもそも、権威や規範と一線を画したのが小間。ここでのルールは徹底した現場主義と美意識だと考えています。今年の獨楽庵、太柱vs.自在を試みるかもしれません。率直なご意見期待しております。

獨楽庵茶会の時間変更

11月より、獨楽庵茶会は、午前と午後の2席で運営いたします。席入の時刻も幅をもたせることにしました。

午前の部は、正午の茶事に準じており11時から12時の間でご希望の席入時刻をお選び頂けます。午後の部は、15時から17時の間で席入時刻をお選び頂けます。この季節、午後の部は15時に席入されても、薄茶が済む頃には日も暮れて夜の露地を楽しむことができます。17時に席入されると、懐石が済む頃には陽も落ちて、手燭を携えて露地を進んで茶席に入ることになります。ライトを消し、蝋燭の灯りでの濃茶・薄茶はこの時期ならではの風情を味わうことができます。

お出ましお待ちしています。

炉開き

今日の獨楽庵は開炉準備のため閉館でした。明日は2組のお客様が来庵予定です。開炉とて特別な趣向はありませんが、ささやかでも開炉の喜びを表現できればと思っています。

明日の八王子は快晴、最低気温6度、最高気温15度の予報です。絶好の開炉日和ではないでしょうか。

炉開き〜歳暮〜正月・初釜と茶の湯界は賑わいの時期です。お誘い合わせのうえ、どうぞご来庵くださいませ。

風炉の名残

一年を通じて獨楽庵で席を開き、つくづく茶の湯は季節だなあと感じ入るようになりました。それまでは、「季節感の無い男」と嘯いていましたが、やはり季節の移り変わりに何かを感じるのは日本人のDNAなのかもしれません。それでも、「この季節には⚪︎⚪︎」というルールには深入りしないようにします。やはり、自分の感性に正直に。

というわけで、今年はとうとう中置きをしないで風炉の季節が終わりそうです。今週になってようやく最高気温が20度を下回る日が現れました。このような陽気になると、中置がしたくなりますが、もう今日は亥の日です。風炉を片付け、炉の準備をしようと思います。

厳しい残暑を共に凌いだ風炉を終うのは格別の感があります。思えば、風炉は「陽」という気がします。それが、段々と冬に向かうとともに「隠」に。夏の間の楽しかったこと(小学生か!)を風炉と一緒に箱にしまう。11月は大侘びとしてやつれた道具や思い出の道具を使いたい気持ちもよくわかるようになりました。

獨楽庵茶会

現在、獨楽庵は茶の湯未経験・初心者向けの「体験茶会」と主として獨楽庵の維持・活用にご賛同頂いている『獨楽庵友の会』会員様向けの「獨楽庵茶会」の2種類の茶会を開催しています。「茶会」と言うと、茶道愛好家の皆様はいわゆる「大寄せ」茶会を思い浮かべると思いますが、古来、御茶をもってお客様をお招きすることを「茶会」と称していました。

現在では、「茶会」が一日に何百人ものお客様がいらっしゃり、一席に数十人が入られる「大寄せ茶会」と、少人数で初座(懐石)と後座(お茶)の2場面で茶の湯を楽しむ「茶事」に分化していると考えることができるでしょう。

その意味では、「獨楽庵茶会」は「茶事に」近いと言えます。一般に茶事は、【亭主迎付け】→【初座入り】→【初炭】→【懐石】→【中立】→【後座入り】→【濃茶】→【後炭】→【薄茶】と進みます。獨楽庵茶会では、懐石と濃茶・薄茶で席を移動するため、【初炭】を省略しています。また、炭の具合によっては【後炭】を省略することもあります。懐石も一汁三菜の侘び仕立てに徹しておりますので、全体の所要時間も2時間半から3時間とコンパクトです。また、時間配分も【初座(懐石)】よりも、【後座】を多めにしてお茶をメインに楽しむことに主眼を置いています。

お客様も一組3名様まで(*注1)とお願いしていますので、三畳台目の茶室でもゆったりとお茶と対話を楽しむことができます。
*注1:亭主一人でおもてなしするため、お客様が多いともたついてご迷惑をかける恐れがあるため。