遅まきながら、獨楽庵の炉縁を生地のものに入替ました。茶道宗徧流の流祖・山田宗徧は二冊の茶道指南書を残しています。そこには、炉縁について、「正月までは塗縁、正月を過ぎたら洗縁」と書かれています。理由は、春になると塵が舞うから。洗縁とは洗える炉縁、つまり木地のことと解釈しています。
宗徧流は塵を嫌います。例えば、重ねた酒杯の一番上の杯に露をはり、順にしたの杯に落としていく作法も塵を嫌うからではないかと解釈しています。かつて、四つ椀と言われていた頃には懐石の器には全て蓋がついていました。しかし、杯に蓋をすることはできません。それで露を張ったのではないかと思います。つまり、露は蓋の代わり。
宗徧翁は、「正月」を境にしていますが、これは旧暦。新暦では節分を境と考えています。
炉縁で面白いのは「侘び人は、木地に軽く漆をかけた掻き合わせ一つでよろしいと」。侘び人、つまり裕福でない者は、炉縁を二つも持たなくてよろしいということ。