茶苑獨楽庵には、二つの三畳台目席があります。一つは、この茶苑のシンボルである太柱席胡と「獨楽庵」。三畳台目向切・右勝手。点前的にはハードル(というか、落し穴)の多い席ですが、庭に向けて壁ではなく障子が貼られていますので、明るく開放的です。
この獨楽庵を陽とすれば、もう一つの三畳台目「船越席」は「陰」と言えるかもしれません。三畳台目出炉・左勝手。中柱、釣棚。四方を壁と比較的小さな明かり取りで囲まれた席は、獨楽庵と異なり凛とした緊張感があります。久しぶりに船越に入ってみると、獨楽庵とは違う茶の湯の楽しさを主張しているように思えました。
簡単に言えば、獨楽庵が「数寄」の茶であるのに対して、船越は「求道」の茶。茶の湯の精神性を思い出しました。3月は、春を迎え浮たった外の空気と、船越の緊張感の対比を楽しんでみようと思います。