宗徧流流祖・山田宗徧は、生涯に二冊の茶道指南書を上梓しているが、そのうちの一つ『茶道要録』には釣釜の心得として、
一、釣釜之事 鎖は老若共に用ゆ。広座席には必ず用いてよし。四方釜は必ず釣り用ゆ。炉の五徳には据えず。
一、自在鈎之事 是は以後五十歳以上の者 師たる者の免を得て用ゆ。竿竹の節ノ数、半を用ゆ。その恰合見所あり。長さ定あり・・・総じて釣物は中柱無の時の事なり。
一、蛭鈎之事 座席の勝手に拘らず、定て右の方へ鈎を向けて打つべし。茶堂前に居て我が右の方なり。鈎に形あり。
興味深いのは、鎖は年齢に関わらず使ってよいが、竹の自在は五十歳以上、しかも師匠の許しを得て使う事と書かれている。私はすでに還暦を過ぎているので、年齢制限はクリアしているが、果たして師匠(家元)から許しを頂けるのだろうか。
また、釣釜は総じて中柱がない時に用いるとある。獨楽庵でいえば三畳台目の船越席は中柱があるので釣釜は使えないことになる。確か、蛭鈎はあったと思うが。一方の獨楽庵は、太柱が特養であるが、あの太柱は中柱ではないので釣釜は使ってよいことになる。鎖よりも自在の方が風情があろうが、それはお家元からお許しが頂けるかどうかにかかっている。
暖かくなって釣釜を使う機会が増え、時に四方釜を使うこともある。四方釜は、五徳に据えず必ず釣るようにと流祖の教えであるので、獨楽庵ではそのように致します。