今日の獨楽庵 – 2024年11月24日

小春日和の八王子。今日の獨楽庵は一客一亭。初座の床は大徳寺翠巌和尚の『力囲(国かまえの中に力』 「りきい」と読む。利休の遺偈「人生七十 力囲希咄 云々」にも出てくる。読めはしないが、翠巌和尚の賛から想像するに、利休の自害に際しての心境のようである。それまで身につけた全てを投げ捨てて、力囲の境地に達するということらしい(間違っていたらごめんなさい)。

この「力囲(りきい)」という言葉は、宗徧流にとってはとても重要な言葉なのである。それは、玄伯宗旦と弟子の山田宗徧が、ある時、利休の遺偈に接し、山田宗徧が「力囲」をとって「力囲斎(りきいさい)」と名乗り、宗旦は「咄」ととって「咄々斎(とつとつさい)」と名乗ったという故事による。ちなみに、当代家元考案の立礼机は「力囲棚」と名付けられている。

話が逸れたが、懐石はいつものとおりの侘び仕立て。折敷には向付としてほたて貝柱の昆布締め。飯と汁。汁の実は里芋。煮物は海老真薯、舞茸を添えて。焼き物は鰤の照り焼き。香のもの、湯桶。菓子はいつもの旭苑製で「山茶花」。

後座の床は宗徧流二世・山田宗引作の竹二重伐。花は、白玉椿。茶入は瀬戸の累座肩衝。薄茶盛は、宗和好みの溜塗り面通。茶碗は、幕末の関白・鷹司政通公の小ぶりな赤楽茶碗。この時期の一客一亭にはもってこいの茶碗。茶杓は、成瀬宗巨 銘「無一物」。

一客一亭。お客様は「贅沢すぎる時間」と感謝されるが、それは亭主も同じ。一客一亭の心に立脚した茶の湯でありたいと思う。

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