夏の獨楽庵茶会

連日最高気温が30度を超えるようになりました。獨楽庵の小間茶室は日本建築の定石どおり「夏を旨とし」極力陽がささないように建てられてはいるものの、外気温があがってしまっては手も足も出ません。古の茶人は、気温が上がる前にお茶事をしてしまおうと、朝会とか暁茶事で夏場もお茶を続けてきました。

獨楽庵でも朝会、暁に挑戦してみようと思っています。とは言え、いきなりではお客様にご迷惑は必至。幾度かの「実験」を経て、会員の皆様にご案内しようとおもいます。もうひとつ、「夜咄」。「夜咄」は本来冬の夜に行うものです。浅はかな私は茶事の生き字引に「何故、夏でも出来るのに夜咄は冬なんですか?冬じゃ寒いし」と尋ねたことがあります。生き字引は一言、「やってみりゃ分かる。夏の夜に灯りを焚いたら虫がきてしょうがないじゃろ」と。我々が生きる令和の世にはエアコンという文明の力がある。窓を閉めてやれば虫は来ないだろう。そこで思った。だったら、正午の茶事だってできるだろうと。

というわけで、夏の獨楽庵茶会は8畳広間「楓の間」を使います。今までも一汁三菜は楓でお出ししていましたが、暑さが厳しい期間は濃茶・薄茶も楓でお出しすることにします。これまで獨楽庵茶会では、懐石の部屋とお茶をお出しする部屋を替えていましたので、茶事でいう「初炭」は意味がないため省略していましたが、夏の間は懐石(初座)と同じ部屋で濃茶・薄茶(後座)をお出しするので、炭つぎ(炭点前)をします。典型的な流れは、
【懐石(一汁三菜)】→【初炭】→【菓子】→【中立】→【後座入り】となるでしょう。短時間とはいえ、外の腰掛けでお待ちいただく時間が発生します。ご了承くださいませ。

丼茶会

筒井紘一著『利休の懐石』を読んでいて、ハタと膝を打った。元々、利休が実践し、紹鴎も『門弟への法度』のなかで「会席は珍客たりとも一汁三菜を過ぎぬべからず」としているのに対し、今日の懐石は一汁五菜どころか、八寸も千鳥の盃もついてくる。この差はどこに起因しているのか・・・というのが最初の好奇心であった。それに対する答えは概ね本書から読み取ることができる。

それ以上に収穫だったのは、本書の最終章「小林逸翁の丼茶会」である。著者の筒井紘一先生は、この逸翁の試みを、「現代の茶事の在り方の指針ともなるべき懐石」として紹介している。正確には、「北摂丼会」というが、懐石は丼程度で済まし、茶の趣向を楽しもうというものである。常々、今日の懐石が冗長かつ華美であると感じていた身には一つの光明に思えたのである。丼会の当番が、自身の新席披露にあたった南喜三郎の“発奮“した茶会には、「丼会の精神に反する」と苦言を呈したという逸話が披露されているところから考えてもこの会の趣旨は、質実であることと言ってもいいだろう。さらに、あえて加えるなら「手作り」。

向付で一献。続いて、創意のこもった手作りの丼で小腹を満たし、残りの時間は茶を楽しもうという茶会。何品も腕によりをかける必要もなく、丼なら自作は用意であろう。これで、十分。いや、より侘びの本質に近づけるのではないかとさえ思う。

獨楽庵茶会

昨年のプレオープンから1年間、試行錯誤を続けようやく獨楽庵運営のペースが掴めてきました。

獨楽庵には4つの茶室があります。
① 獨楽庵 三畳台目向切右勝手 太柱
② 船越席 三畳台目左勝手、中柱・釣棚
③ 二畳 利休好み
④ 楓の間 八畳広間

前半は楓の間で一汁三菜のお食事を召し上がって頂き、後半は小間(獨楽庵または船越)に移動して濃茶、薄茶を差し上げています。亭主迎え付け、炭点前が省略されているため茶事とは言い難いので、「プチ茶事」などと称しています。このような茶席を『獨楽庵茶会』として毎月15〜20回開催しています。

獨楽庵友の会特別会員、正会員(A、B)の皆様は無料で参加して頂けます(ただし、お連れ様は3,000円頂戴いたします。賛助会員の皆様はお手元の「獨楽庵茶会茶券」をご利用になれます。茶券はお連れ様にお譲りすることも可能です。

6月は18回開催予定ですが、すでに予約されている日があります。空席があるのは、6月21日(金)、23日(日)、24日(月)、26日(水)、29日(土)です。いずれの日も、11時または14時をお選び頂けます。

予約はこちらからお願いします。