夏の獨楽庵

本格的な夏の到来・・・のようです。しばらくは日中の気温が30度超えの予想が続いています。冷房がない時代、これほどまでの酷暑ではなかったにせよ、夏の日中の茶事は厳しかったはずです。それでも茶の湯をしたい茶人は、まだ外気温が上がりきらない朝のうちに茶の湯をすることを思い立ちました。今手言う「朝茶」です。さらに、陽が登る前に「暁の茶事」を行うことも。こうして、暑さを凌ぎつつ秋の到来を待ったわけです。

現代人の感覚からすると、「では、夜にもできるのでは?夜咄という茶事もあることだし」と迂闊に思ってしまうのですが、その思いつきは達人の一言で一掃されてしまいました。「じゃあ、やってみれば?」と。夏の夜、火を灯した茶室で何が起こるか。簡単です。虫が集まる(笑)茶の湯どころではありません。

ということで、夏は朝。獨楽庵でも「朝会」を計画しています。6時席入りで8時過ぎに終了。これなら、ギリギリ仕事に間に合うでしょう。いや、昨今はすでに6時でも暑いので、5時席入りか。手始めに、週末に開催してみようと思います。

それとは別に、現代はエアコンという文明の力があります。獨楽庵では、八畳の「楓の間」にのみエアコンが敷設されていますので、夏の酷暑の間、獨楽庵茶会は初座も後座も「楓の間」を使用します。初座と後座で茶室を変えるのが獨楽庵茶会の魅力の一つですが、夏の間はどちらも「楓の間」でいたしますこと、ご了承くださいませ。

松永耳庵生誕150年記念追善茶会

昨日(6月16日)は、獨楽庵もお休みをいただき、小田原・松永耳庵記念館で開催された『松永耳庵生誕150年記念追善茶会』にお邪魔しました。

「耳庵」では、本年2月の第一回倶楽茶会で獨楽庵席を担当いただいた小張あゆみ氏が席主。暑い中、空調のない「耳庵」でのお席ということで、略盆点前・冷水点で一服頂戴いたしました。いつもながら、小張氏のお席造りには感服いたします。今回も、草に徹した設えのなか古銅の耳付き花入が全体を引き締めていました。草の中の真は、緊張感とともに席主の心意気が感じられます。

会場では、常連さんをはじめ獨楽庵にご来庵された皆様とお会いすることができました。茶の湯の輪が広がっていることを嬉しく思いました。

薄茶

茶事における薄茶は、濃茶で締めたその茶事における感動や心の動きを主客が心を開いて語り合う場と考えています。ですから、亭主は客を引き留め、所望があれば何服でも薄茶を点て、お煮えが落ちれば、炭をついで名残を惜しみます。ですから、薄茶盛には薄茶をたっぷりと盛って持ち出すようにと教わりました。

大寄せ茶会では、時間の都合もありゆっくりと過ごせないのが残念なところですが、獨楽庵では大寄せの倶楽茶会以外は多くてもお客様は三名ですので、心置きなく薄茶を召し上がって対話を楽しんで頂きたいと思います。

薄茶点前の稽古では、詰め客までお茶が出たところで、茶碗に湯を注ぎ、「もう一服如何でしょうか?」と尋ねるように教わります。これに対して正客は「もう十分頂戴いたしました」と応えるように教わります。獨楽庵では、もし、もう一服薄茶を召し上がれるようでしたら、是非ご所望してください。